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前田智徳は代打としても質、レベルともに傑出していた/谷繁元信コラム

8/17(金) 11:01配信

週刊ベースボールONLINE

『ベースボールマガジン』で連載している谷繁元信氏のコラム「仮面の告白」。ネット裏からの視点を通して、プロ野球の魅力を広く深く伝えている同氏だが、今回は代打に関して、だ。

「打ち取った」ではなく「打ち取れた」

 キャッチャーとしてマスク越しに見た代打論を語っていきましょう。どういうタイプが嫌で、どういうタイプがくみしやすいのか。

 やっぱり、初球からしっかりタイミングを取れて、来たボールに対してスイングできる代打は嫌でしたね。

 一方で、代打というのは基本的に、1球でボールを仕留められないだろうと思っていました。その日初めて見る生きたボールを初球から振りにいって、しっかり合わせてくるバッターというのは皆無に等しかったといっても過言ではありません。

 ですから、キャッチャーの立場からすると、とにかくワンストライクは取れるだろう、と。本当の勝負どころ以外の場面では、ピッチャーには初球ストライクを要求していました。真っすぐでファウルを打たせようとするのか、変化球を見送らせてカウントを整えるのか、そこは判断になるんですけど、代打イコール、ボールから入って様子を見ようという考えは少なくとも僕にはなかったです。

 それだけバッテリーは、代打を迎えた場合、精神的優位に立っているということです。ですから代打にポンと出てきてヒットを打つのは至難のワザなんです。スタメンで出ている選手というのは、それまでの打席で何度かスイングしたりボールを見る中で、そのスピードに慣れたりしてるわけじゃないですか。逆にいえば、まったくプロセスがないまま打席に入って、一振りで仕留めることができていた人というのはすごいんです。

 そこで思い出したのは広島の前田智徳です。彼の場合は、たとえファーストストライクが取れたからといって、こっちが有利になったとは感じないんです。追い込まれても普通の野球選手にはないバットコントロールの技術を持っていた。ですから仮にアウトにしても、言葉で表現すると「打ち取った」ではなくて、「打ち取れた」になるんです。ほかの代打というのは、こう打ち取ってやろうというイメージどおりに「打ち取った」、でも前田の場合は「よかった、打ち取れた」。

 それぐらい前田のバッターとしっての質、レベルは傑出していました。バッターボックスでもオーラ、雰囲気は感じましたよ。それだけのバッターだということをファンの人も含めて周りも認めているし、ピッチャーも感じていたはずです。

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