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“意識高い系”が仇となり大手を辞め起業して陥った37歳の「マイルド貧困」

8/22(水) 6:00配信

ダイヤモンド・オンライン

 格差や貧困問題の是正が放置されているうちに、「アンダークラス(パート主婦を除く非正規労働者)」が900万人を突破、日本は「階級社会」への道を突き進んでいる。中でも「中間階級」が崩壊、新たな貧困層が生まれてきた。それは、どん底一歩手前の「マイルド貧困」とも呼べる新たな階級だ。そこでDOL特集「『マイルド貧困』の絶望」第6回は、いわゆる“意識高い系”であるがゆえに、大手企業を辞めて起業、その結果「マイルド貧困」に陥った男性を追った。(ライター 根本直樹)

● “体験を売る”というアイデア実現のために 一部上場企業を辞めて独立

 「正直、今はどん詰まり状態。後悔していないと言えば嘘になります。日本って1度つまずいたら、そう簡単に再起できる社会じゃないんですよ。だから、今は苦しくても、何とか続けていくしかないと思っています。光明ですか? そろそろ見えないと本気でヤバいんですが」

 山下颯太社長(仮名・37歳)はそう言うと、力なく笑った。かつては一部上場の大手IT系企業でEコマース関連部署のマネージャーを務めていたが、3年前に起業を目指して退社。当初は、フリーランスとして前の職場の上司から仕事をもらいながら準備を進め、今から2年前、念願のITベンチャーを立ち上げた。

 「最初は、専門的な知識のあるEコマース関連のコンサルと事業支援を柱に据えて、安定的にキャッシュを稼ぎつつ、将来的には自社サイトを立ち上げ、あるモノを売ることを目標に掲げていたんですが、目論見通りにはなかなかいかなくて…」

 “あるモノ”とは何か。

 「命綱のようなアイデアなんで詳しくは言えませんが、ある体験のことです。体験を売るんです」と山下さんは目を輝かせるが、今のところそれを具現化する資金も、人的余裕もないという。

 「機を見て、大手企業や投資家にぼくのアイデアを話し、資金調達したいとは考えています。でも、まだその段階じゃない。アイデア自体をもう少しブラッシュアップして、事業としての実現可能性を高める必要性を感じています。今はまだ、半分夢物語のようなアイデアなんで」

 近所の量販店で買ったというブルーのワイシャツに、チノパンといういで立ち。いかにも実直そうな顔つきからは、ITベンチャーの社長というよりも、学校の先生か銀行員のような雰囲気が漂う。大手IT企業時代の年収は約700万円。福利厚生も手厚く、ブラックとは程遠い社風だったという。

 そんな安泰な立場を捨ててまで、なぜ山下さんは起業の夢を見たのだろうか。そこには「意識高い系」と呼ばれる人たちが陥りがちな罠があった――。

● “セミナー渡り鳥”と化していた社員時代 起業をあおる意識高い系界隈の闇

 山下さんの立ち上げた会社は資本金300万円。従業員は今のところ社長の山下さん1人だけだが、いかにも今どきのITベンチャーといった感じの日本語をもじった横文字の社名がつけられ、名刺の肩書には“CEO”の文字が。

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