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U-20W杯優勝、ヤングなでしこの10番・長野風花。突然の韓国移籍、その真相【インタビュー】

8/28(火) 12:07配信

フットボールチャンネル

 U-20女子日本代表、通称「ヤングなでしこ」がU-20女子ワールドカップ制覇を果たした。日本女子サッカー史上初の偉業の中心にいた長野風花は、現在韓国リーグでプレーしている。なぜ日本を飛び出して、韓国に挑戦しているのか。そして、その先に何を見据えているのか。本心を包み隠さず語ったロングインタビューを前後編でお届けする。今回は前編。(取材・文:舩木渉)

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●ヤングなでしこ、U-20女子W杯初制覇の立役者

「ヤングなでしこ」という言葉は、日本で開催された2012年のU-20女子ワールドカップの際に、U-20女子日本代表の愛称として定着したと記憶している。ちょうど前年になでしこジャパンが女子ワールドカップで初優勝を飾り、女子サッカーに注目が集まっていた頃だった。

 あれから6年が経ち、日本女子サッカー界を取り巻く状況は大きく変わった。2011年の女子ワールドカップ優勝メンバーだった宮間あやはかつて「女子サッカーをブームでなく文化にしたい」と常々語っていたが、現状は「ブーム」が去り、一時のような盛り上がりはもうない。

 だが、その流れを変えるかもしれない、新たな日本女子サッカー界の希望とも言える出来事があった。2018年8月24日、新世代の「ヤングなでしこ」が史上初のU-20ワールドカップ優勝を果たしたのである。

 その大会で日本の10番を背負い、決勝までの全6試合にフル出場したのが長野風花だった。15歳でなでしこリーグ初出場、飛び級で参戦した2014年のU-17ワールドカップで優勝、2年後には「出場全選手中唯一のタイトルホルダー」として2度目のU-17ワールドカップに出場して準優勝&大会MVP、そしてAFC最優秀ユース選手も受賞した、いわば「将来を約束されたスター候補」である。

 しかし、これだけ輝かしい実績を誇る彼女でも、これまでのキャリアは決して順風満帆ではなかった。今年、日本女子サッカー界を驚かせたのは突然の「韓国移籍」。浦和レッズレディースの一員として、なでしこリーグという国内トップレベルの環境に身を置いていた有望株が海外挑戦を決断した。

 では、なぜ韓国への移籍だったのか。そして、自身の過去、現在、未来にどのような考えを持ち、その視線の先に何を見据えるのか。なでしこジャパンへの思いとは…。韓国で奮闘する長野を直撃した。(取材日:2018年5月26日)

●「全てにおいて自分の実力が足りなかった」

――今年の日本女子サッカー界の動きを見ていて、最も驚いたのが長野選手の韓国移籍でした。女子ワールドカップまであと1年というタイミングで、なぜ今韓国でのプレーを選んだのでしょうか。

「昨シーズンが終わった後のオフに3ヶ月間、チェルシー・レディースに練習参加させてもらいました。世界のトップを知りたい、それが純粋な理由でした。チェルシーにはヨーロッパからアメリカまで様々な国の代表選手がいて、自分がその中でやってみて、本当に力の差を感じたんです。

もし日本で大学に通いながら、1日に1時間半の練習量では2020年の東京五輪には絶対に出られないし、今年のフランスのU-20ワールドカップでも結果を残せないと感じて、『日本にいちゃダメだ、韓国に行くしかない』と思い決断しました。もちろん将来的にヨーロッパでプレーしたい気持ちもありますが、仁川現代製鉄レッドエンジェルスには韓国代表選手が10人くらいて、レベルも高いですし、サッカーだけに集中できる環境が整っています。日本にないものが韓国にはあると感じています」

――チェルシーで思い知らされたトップレベルとの差、それは具体的にどんなものでしたか?

「全てですね。自分と全てのクオリティが違いました。スピード、パワー、巧さ、最後のシュートを決めきる力、ディフェンスの1対1の強さ…全てにおいて自分の実力が足りませんでした。チェルシーのリーグ戦も毎試合見ていたんですけど、日本のリーグとは大違いで、レベルの差がありすぎて、ここでしっかりと自分のパフォーマンスを発揮できないと、なでしこジャパンに入ってワールドカップに出たとしても結果を残すのは難しいと感じました」

●「何で韓国?」疑問の声に…

――実際に韓国女子リーグ(WKリーグ)の試合も拝見して、日本とはまた違ったレベルの高さを感じました。単純な比較はできませんが、フィジカルもテクニックも、なでしこリーグを上回っている印象です。

「海外の選手のことを『下手』『あまり技術がない』と言う人もいますが、それは実際に一緒にやっていないだけで、一緒にやったら日本人よりもしっかりした基礎技術を持っていることはすぐにわかります。膝の高さに来たすごく強いパスでもしっかり止めるんですよ。

でも日本人が技術が発揮できるのは、パススピードが遅いからなのではないかと思うこともあります。日本人の選手はもちろん上手いし、器用さはありますけど、一方で海外の選手はどんなボールで止められるし、速いボールも蹴れるし、本当に全てにおいてレベルが違いました」

――韓国移籍の決断を周りから心配されることはありませんでしたか?

「日本から韓国に移籍する時、色々な人に『韓国で大丈夫なの?』『何でレベルの低いところに行くの?』って言われたこともありました。おそらく韓国リーグのことを知っている人はほとんどいないと思うので『大丈夫?』と感じるのもよくわかります。

でも、実際にチームメイトのベアトリスとタイスはブラジル代表のレギュラーですし、韓国代表の主力級もたくさんいるし、プロ選手としてその中でプレーできるのも自分にとってすごく大きい。他のチームにも日本より多くの外国人選手がいて、彼女たちと日常的にマッチアップできるのも大きな刺激になっています。今は韓国に来て本当に良かったと思っています」

●「なでしこで世界一」という明確な目標

――韓国へ移籍するにあたって、誰かに相談したり、アドバイスを求めたりしましたか?

「相談はしていないですね。相談するようなことでもないというか。全ては自分の道なので、自分で決めるだけという感じでした。これはお母さんの影響も大きいと思います。今回の移籍にも何も言わないで『頑張りなよ。自分で決めてみた道だからね』というだけで、応援してくれていますし、毎日LINEして、試合前は必ず電話しています。実は韓国へ行くことも『もう決まったよ』と事後報告でした(笑)

小さい時から自分の道は自分で決めてきたので、全部事後報告だったし、相談も全然しません。何かを決断するときに、もちろん『韓国リーグどうですか?』といった情報を事前に集めるのはすごく大事だと思います。でも、決断する時に周りに相談する理由がわからないというか…。自分がどう思うかでしかないと思っちゃいますね」

――19歳にして「全ては自分の道」と言える選手に初めて出会いました。

「自分がどうなりたいかという目標がちゃんとあるから、そこに向かって今何をすべきか考えたら、そのために決断するのが当たり前だと思っています。私には『なでしこジャパンで世界一』『世界で通用するプレーヤーになる』という目標があって、そのために物事は自分の中で自然に決まっていくんです」

――明確な目標があって、そこにたどり着くための「韓国移籍」という決断だったわけですね。

「韓国には自分が本当に求めていたものがありました。寮生活なのでご飯も作らなくていいし、チームの練習は午後なので、午前中はランニングしたり、筋トレしたり、1人でグラウンドに行ってボール触ったり足りないものを補うために時間を使えます。夜は英語や韓国語の勉強をして、毎日が充実しています」

(後編は後日公開予定)

(取材・文:舩木渉)

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