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さらば、ファントム戦闘機! 日本の空を守り続けて40年

8/30(木) 7:15配信

FRIDAY

 “ファントム“の愛称で呼ばれるF-4が、ついに退役の時を迎えようとしている。同機は現在、茨城県百里基地に所属する戦闘機部隊の301、302飛行隊と、偵察任務を行う501飛行隊に配備されている。ファントムは、ベトナム戦争にて米軍の主力戦闘機として活躍し、その後は世界中の空軍に配備されたベストセラー戦闘機で約5000機が製造された。

【写真7点】さらば、ファントム戦闘機! 報道カメラマン横田徹によるフォトルポルタージュ

 日本では1971年に航空自衛隊に導入されて以来、防空圏を守り続けてきた。 

 冷戦時代の1987年12月9日、ソ連軍の偵察機が沖縄上空で領空侵犯をした。このとき、自衛隊初の実弾警告射撃をしたのがこのファントムだった。

 しかし、エースとして活躍してきたファントムも年老いてしまった。世界各国の空軍の中において、現在でもファントムを現役配備しているのは航空自衛隊だけだろう。現在まで現役の戦闘機として活躍してきた理由はどこにあるのか。

 ファントムは三菱重工によって日本国内でライセンス生産されてきたため、国産の部品で整備が可能になっていた。それらの部品を使い、熟練の整備員たちが精魂を込めてファントムの整備を手掛けてきた結果、これほど長い間大空を駆け巡ることができたのだ。

 ファントムを飛ばして8年目という庄司友洋1尉(31)は話す。

「ファントムは型としては古く、操縦するのが非常に難しい機体だと思います。新型のF-2はモニターに計器類が表示され、フライトコントロールはコンピューターで行っている部分も多い。それに比べてファントムはアナログで、パイロットの技量に左右されます。休暇などで1週間も乗っていないと、操縦感覚を忘れてしまうほど。最大性能を発揮するためには日々の訓練が必要です」

 ファントムには二人乗りという大きな特徴がある。前席と後席のパイロットの信頼関係がなければ能力が十分に発揮できない。他の戦闘機に比べて決定的に“有利“なのは、前席が前方を見ている時には後席が後方の敵機の動きを見て前席にアドバイスができる点だ。時には集中し過ぎて熱くなってしまった前席に後席が冷静にアドバイスをするといったこともあるようだ。

 日本への領空侵犯を繰り返すロシア軍機や、近代化が進む中国軍機にファントムは対抗できているのだろうか。

 ファントムだけで飛行時間が2000時間、水野真和3佐(38)はこう話す。

「愛着があるので退役してしまうのは寂しい気持ちもありますが、戦闘機というのは最新の装備を備えた機体が有利。ファントムより能力の高い最新機種に乗った相手と対峙した時、相手のミスを見抜いて勝(まさ)るようにと思いながら、日々操縦しています」

 格納庫前の駐機場でスタンバイするファントムの周囲には、真剣な眼差しで何か異常がないか、機体に触れて細部まで確認作業を行う整備員たちがいた。

 20年間、数々の戦闘機の整備を行ってきたベテラン整備員の村田洋一3曹(42)は話す。

「ファントムは頑丈な戦闘機だという一言に尽きます。それと、ミサイルや燃料タンクなどが低い位置に装着されています。機体の下で作業する時はパネル一つを開けるにも大変で、腰の痛みは全員が感じています。ファントムだけではなく全ての機体に共通するのは“五感を使って整備する“ということ。見て、触って、音を聞いて、匂いを嗅ぐ、そして機体から漏れる液体が水か燃料かわからない時は舐めて味を確かめたりもします。時々、米軍の戦闘機が百里基地に来るのですが、米軍の最新鋭機よりもうちのファントムの方が綺麗な状態に保たれていると思います。古いけどボロくはないと自信を持って言えます」

 ファントムの複雑な構造から整備には職人技が必要とされるため、パイロットと整備員の信頼関係を基礎としたコミュニケーションは不可欠になる。操縦するパイロットと最高の状態を維持する整備員の意志が共鳴してこそ、最大の能力が発揮できる。信頼関係が重視されるので、飛行隊内での人間関係はとても濃密だという。

 301、302飛行隊では、ファントムからステルス性能を備えたF-35Aに機種転換が予定されており、2020年度までには全てのファントムが退役することになっている。その最後の日まで、ファントムは空を舞い、首都圏の空を守る。

最終更新:8/30(木) 7:15
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