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「五輪不況」でボロボロのブラジル、日本も他人事ではない理由

9/13(木) 6:00配信

ダイヤモンド・オンライン

 リオ市民を激怒させた、ブラジル国立博物館の火災。リオ五輪で財政難となったため、必要な消火設備の整備などを怠ったとされている。これは日本も対岸の火事ではない。実は、五輪景気で潤うのは開催されるまで。開催後は不景気に陥るというのは、過去の開催地の例を見ても「常識」なのだ。(ノンフィクションライター 窪田順生)

● 五輪のせいで財政難… ブラジルの博物館火災のお粗末

 先日、地球の裏側から、なんともやりきれないニュースが届けられた。リオデジャネイロのブラジル国立博物館で火災が発生して、200年の歴史ある建造物だけではなく、2000万点を超える収蔵品の約9割が全焼してしまったのである。

 灰となったものの一例を挙げていくと、南米大陸で発掘された最古の人類化石、エジプトのミイラ、コロンブスが来る以前の南米古代文明のミイラ、さらには噴火で一瞬でなくなった古代都市・ポンペイのフレスコ画などがある。つまり、「人類の宝」ともいうべき世界的な文化財がパアとなったのだ。

 やりきれないのはそれだけではない。実はこの博物館、現地ではかねてから火災の危険性が指摘され、多くの人がスプリンクラーなどの消火設備をつけるべきと訴えていた。だが、ブラジル政府が財政難を理由に科学分野の予算をザックリ削ったことで、「放置」されてきたのだ。

 今回の悲劇については、ブラジル国民の間から、「五輪が悪い」という声がチラホラと出て抗議デモにまで発展している。

 消火栓が作動しなかったのは、国に輪をかけて財政が厳しいリオ州がメンテナンス費を削ったからなのだが、一部市民から、このリオ州の苦境を招いたのが、2016年のリオ五輪のせいだと指摘されている。

 つまり、2年後に五輪開催を控える日本にとって、これは決して「対岸の火事」ではないのだ。

● 五輪向けのインフラ投資が元凶で 不況に喘ぐブラジル国民

 「おいおい、博物館に予算がつけられないほど財政難の国と、世界が憧れる経済大国ニッポンでは全く事情が違うだろ」というお叱りが飛んできそうだ。確かに、ブラジルで起きたことが、そのまんま日本で起きるとは考えにくい。だが、我々日本もブラジルのように、何かしらの大切なものを失う恐れがある、ということが申し上げたいのだ。

 いったいどういうことかを分かっていただくには、まず、なぜそこまでブラジルの人たちが「五輪」を目の敵にしているのかを知っていただく必要がある。

 日本人のほとんどは「五輪」と聞くと、スポーツ振興、インバウンド、震災復興、日本人の心が一つになる機会――などなど、ありとあらゆる良いことの「起爆剤」になるハッピーなものという印象を抱いているが、前回の開催地の人たちからすれば、「不況の起爆剤」というイメージの方が強い。

 「五輪に向けた多額のインフラ投資により、基礎的財政収支は12年から赤字に転落。長期負債は16年時点で1080億レアル(約3.5兆円)に達した」(日本経済新聞2018年2月19日)

 州財政をここまで悪化させて建設したのが、競技場やオリンピックパークという「五輪インフラ」。五輪から2年が経った今、熱狂に沸いたサッカースタジアムは廃墟化し、メイン会場のオリンピックパークも閑散としている。膨大な維持費を食う「負の遺産」になってしまったのだ。

 “金食い虫”を抱えて財政難に苦しむとなれば、「本当に社会に必要なインフラ」の投資が削られるのは時間の問題だ。ブラジルでは、博物館付近の消火栓はもちろん、「治安」に対する投資まで削られてしまっている。

 警察官への給料遅配が常態化して、パトカーや警察備品にも金が回らなくなったことで、治安が急速に悪化。殺人件数は2012年まで減少していたが、五輪インフラへの投資が始まった以降、再び悪化に転じている。こうなれば、消費も冷え込むし、企業業績も悪化する。完全に負のスパイラルに陥ってしまったところにトドメを刺したのが、今回の国立博物館の火災だったのだ。

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