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同学年内の「生まれ月」の差は、意外に尾を引いている

9/19(水) 16:39配信

ニューズウィーク日本版

その後の人格形成にも影響を及ぼしていると考えられる

東洋経済オンラインに8月14日付け掲載の、『「4月生まれ有利」「翌3月生まれ不利」は本当か 親や先生は「生まれ月の格差」に注意が必要だ』という記事が出ている。

子どもの学力を決めるのは、地域と家庭の教育レベル

日本の学校は生まれた年度で区切る学年制で、教室の中には4月生まれから翌年3月生まれまでの子が混在している。両端では約1年の差があり、これは結構大きい。年少の児童ではなおさらだ。

同時期に同基準のテストをした場合、心身の発育量による差が出てもおかしくない。実際にそうであることは教員なら誰もが経験で知っている。

上記の記事では、国際学力調査の「TIMSS」が引用されている。IEA(国際教育到達度評価学会)が4年間隔で実施している数学・理科の学力調査で、対象の児童・生徒(小4、中2)の生まれ月もたずねている。このデータを使えば生まれ月別の平均点を出せる。<表1>は、小4の算数・理科、中2の数学・理科の結果を整理したものだ。

<表1>

最高値(黄色)と最低値(青色)を見ると、どの教科でも20点以上の開きがある。小4では4月生まれが最も高く、2月生まれが最も低い。中2では、3月生まれが最低となっている。

早生まれが不利というのは、データでも言えそうだ。発達段階が低い小4児童ではそれが明瞭で、上記の記事タイトルにある「4月生まれは有利、翌3月生まれは不利」という傾向が見られる。

その後の人格形成にも影響を及ぼしていると考えられる

これは最新の2015年調査のデータだが、単なる偶然ではない。過去のどの年で見ても、早生まれの生徒群(1~3月生まれ)は、その他の生徒群よりも平均点が低くなっている<表2>。小4の理科では、2003年を除く全ての年で15点以上の差がある(黄色マーク)。

<表2>

同じ教室で机を並べていても、生まれ月の差(最大約1年)の影響があるようだ。上記は学力テストの結果だが、体力では生まれ月の効果がもっと出るのではないか。小さい子の場合、身体の発育量に1年の差があるのは大きい。スポーツ選手には4~5月生まれが多いというが、幼少期に体力テストで良好な結果を収めることで、運動が得意という自信がつき、それが継続するためかもしれない。

早生まれの子では、その逆が起こり得る。自分では頑張っているつもりでも、生まれ月という(いかんともしがたい)要因で人並みの結果を出せない。それが積み重なると、否定的な自我が形成されることになる。早生まれの不利が中学生まで引き継がれているのは、その影響と考えられる。

ちなみに欧米諸国では、生まれ月の学力差はここまで大きくない。保護者の意向で、学年を柔軟に遅らせることができるためだろう。だが、生まれ年度による学年制を厳格に用いている日本ではそうはいかない。

教師、とりわけ低学年の教師は、教室に心身の条件が異なる子どもが混在していることに留意する必要がある。テストの実施時期や評価規準を工夫すると同時に、「生まれが遅いのだから仕方がない面もある」ことを、当人に伝えるのもいいだろう。それをいいことに怠け癖がついては困るが、できないことをとがめるばかりというのも論外だ。

<資料:IEA「TIMSS 2015」>

舞田敏彦(教育社会学者)

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