ここから本文です

右肩上がりの手術支援ロボ「ダ・ヴィンチ」特許満了でライバル増も問題なし?

9/19(水) 8:40配信

HARBOR BUSINESS Online

 手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」 (da Vinci Surgical System=ダ・ヴィンチ・サージカルシステム、ダ・ヴィンチ外科手術システム)は、米国インテュイティヴ・サージカル社が開発した内視鏡下手術用の手術用ロボットである。

 手術用ロボットというと、まるですべての手術をロボットが行うようだが、「ダ・ヴィンチ」は、医師に代わりそれ自体で手術を行うものではない。医師が手術支援ロボットを操作して手術を行うのだ。

 1980年代の後半に、「ダ・ヴィンチ」の原型は、戦場での手術を遠隔で行うシステムの開発を目的として、米国陸軍および旧スタンフォード研究所において開発された。

 手術や検査における侵襲(痛み、発熱、出血など)を最小限に抑えようと努める医療のことを「低侵襲(ていしんしゅう、less-invasive)」と呼ぶが、「ダ・ヴィンチ」は、患者への低侵襲な手術を目的としている。

 2016年9月末の段階で「ダ・ヴィンチ」は、世界で3803台、日本では237台が導入されている。(参照:日本ロボット外科学会)

「ダ・ヴィンチ」は、サージョンコンソール、ペイシェントカート、ビジョンカートなどから構成される。

 執刀医はサージョンコンソールで、遠隔で手術を行うのであるが、そこはまるでコックピットであるかのようである。サージョンコンソールで、“執刀医はビューポートをのぞき込み、三次元表示モニターを見ながら、手では2本のマスターコントローラーを、足ではフットスイッチを操作することによって手術を行う”という(参照:藤田保健衛生大学病院「手術支援ロボット「ダヴィンチ」」)

◆2018年春ドラマの話題作「ブラックペアン」にも登場

 2018年、春のTBS系の「日曜劇場」で放映された、嵐の二宮和也主演の医療ドラマ『ブラックペアン』(原作は、海堂尊さんの『ブラックペアン1988』・講談社)は話題作となった。その第5話で、「ダーウィン」という異なる名称で登場したのが、「ダ・ヴィンチ」をモデルにした手術支援ロボットである。

 ドラマでは、心房中隔(心臓の4つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)のうち、右心房と左心房の間を隔てる筋肉の壁のこと)の細菌が繁殖した箇所を切除するために、「ダーウィン」によるロボット遠隔手術をおこなった。

 劇中、患者が子供であったのであるが、子供の体の大きさを考慮してアームの調整をしなかったため、アーム同士がぶつかってしまい動かなくなるというトラブルがあった。アームが動くように調整した後、開胸手術することになったので、「ダーウィン」で手術成功とはならなかった。

◆「ダ・ヴィンチ」の保険適用も拡大

「ダ・ヴィンチ」の対象疾患は、消化器系(肝細胞がん、胆管細胞がん、転移性肝がん、膵腫瘍、胃がん、食道がん、直腸がん)、呼吸器系(肺がん)、泌尿器系(限局性前立腺がん、腎がん、膀胱がん)、婦人科系(子宮がん、子宮筋腫、子宮内膜症)など幅広い。しかしながら、これまで、「ダ・ヴィンチ」の国内での保険適用は、前立腺手術および腎部分摘除術に限られていた。それ以外は、患者、または医療機関が医療費を全額負担する自由診療で行われてきた。

 今年1月、厚生労働省の中央社会保険医療協議会総会は「ロボット支援下内視鏡手術」の保険適用範囲の大幅な拡大を決定した。胃がん、肺がん、直腸がん、子宮がんなど 12 の術式の保険収載を承認し、4月から適用されている。腹くう鏡や胸くう鏡を用いる内視鏡手術の適応であることが前提となる。(参照:医業経営マガジン)

 また、今年4月、最新モデル「ダ・ヴィンチXサージカルシステム」が国内で薬事承認を取得し、6月に納入を開始した。

◆この2年、株価が上昇を続けるインテュイティヴ・サージカル社

 米国インテュイティヴ・サージカル社(Intuitive Surgical, Inc)は、米国ナスダック上場企業である。株価は、2011年1月頃に100ドルであったが、2016年3月に200ドルへ到達し、2018年9月17日の終値は558.65ドルまで上昇している。この2年間の株価の上昇は、非常に大きい。

 今年7月19日に発表した2018年第2四半期決算では、主に米国の一般的な手術手技や世界的な泌尿器科のオペの増加により、2017年の第2四半期と比較して「ダ・ヴィンチ」を使った手術件数が約18%増加したとしている。

 さらに、第2四半期の「ダ・ヴィンチ」の出荷件数は、昨年166であったが、今年は220へと増加したという。2018年の第2四半期の売上高は、2017年の第2四半期の7億5900万ドルに対し、約20%増加して9億9900万ドルとしている。売上構成は、器具・付属品、システム、サービスの3つから構成されるが、前年同期比で売上は各々、器具・付属品が約20%、システムが約25%、サービスが約11%増加した。器具・付属品、システム、サービスの売上構成比は、52%、31%、17%となっている。

 当サイトでも既報のように(参照:『あの「ダ・ヴィンチ」特許満了。いよいよ手術支援ロボット戦国時代へ』)、「ダ・ヴィンチ」は、中心的な技術の特許満了に伴い、競合他社の巻き返しが期待されている。

 しかしながら、市場の伸びが大きく、すぐに競合他社のシェアが急上昇することはなく、「ダ・ヴィンチ」の導入が増え、また、既存導入先からの器具・付属品の売上構成比が高いため、株価が下がる懸念はさほど大きくないのではないかと、筆者は楽観的に観ている。

<文/丹羽 唯一朗>

ハーバー・ビジネス・オンライン

あなたにおすすめの記事