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【イップスの深層】ドラフト解禁年に無双だった森大輔を襲った突然の悪夢

9/21(金) 17:40配信

webスポルティーバ

連載第19回 イップスの深層~恐怖のイップスに抗い続けた男たち

■証言者・森大輔(3)

「19歳、20歳の頃は怖いものは何もありませんでした。プロでは杉内(俊哉)さん、和田(毅)さん、岩瀬(仁紀)さんといった左ピッチャーが活躍していましたけど、負ける気はまったくありませんでした。『早く同じマウンドに立たせてくれ』と思っていました」

■「高卒→プロ」のはずが…大人の事情で狂い始めた森大輔の野球人生

 森大輔は16年前の自分の心境を掘り起こした後、おどけるように「たぶん過信も入っていたのだと思います」と付け加えた。

 無名の七尾工業から社会人の名門・三菱ふそう川崎に進んで2年目。森は本格開花の時を迎えていた。

 5月のベーブ・ルース杯ではMVPを獲得。最速149キロを計測しただけでなく、相手打者の心理が手に取るようにわかり、どんな球種も狙ったところに投げることができた。

 大会後にはアジア大会に向けた日本代表候補合宿に参加し、実力をアピール。プロアマ混合チームのため社会人選手にとっては狭き門だったが、森は当然のように代表に選出された。

「今だから言えることですが、合宿では遊んでいました。実戦でわざと3ボールにしてから三振を取ったり……」

 アジア大会では開幕前に肩を痛めたため大事を取って出番はなかったが、大会中には本格投球ができるほどの軽症だった。社会人2年目のシーズン通算防御率は0点台。絵に描いたような順調ぶりだった。

 そして、いよいよドラフト解禁となる社会人3年目のシーズンがやってくる。

 異変はヒジからやってきた。3月最初の公式戦である東京スポニチ大会。初戦の日本生命戦に先発した森は、試合中に左ヒジに違和感を覚える。

「なんかおかしいな……と。痛いというより、重い。試合は勝ったのですが、初めての感じだったので、チームの首脳陣には『ちょっと休ませてください』と伝えました」

 スポニチ大会ではその後の出番はなかったが、直後の日立市長杯でも森は先発起用を言い渡される。ヒジの違和感が残っていることを伝えた森に、ある首脳陣からの心ない言葉が突き刺さった。

「今年プロに行くことを意識してるんじゃないよ」

 折しも、森のヒジの違和感についてチーム内で「プロ球団から『痛いと言え』と言われているんじゃないか?」という疑念が広まっていた。そんな事実はなかったが、森は疑念を払拭するため、登板することにした。

 小雪が舞う日立のグラウンド。気温は低く、ヒジは重い。そんな悪条件が重なったためか、森はキャッチボールから「何かおかしいな?」と感じていた。キャッチャーに投げるのが怖く感じるのだ。

 ブルペンに入る。捕手を座らせて腕を振る。ストライクゾーンに投げている感覚なのに、ショートバウンドする。おかしいと思いながら次の球を投げる。再びショートバウンドする……。その繰り返しだった。約40球の投球練習のほとんどがショートバウンドになった。ベテランのキャッチャーは「わざとやってるんだろ?」と笑った。

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