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米中貿易戦争「習近平の敗北」で日本に大チャンスが訪れる理由

9/23(日) 7:00配信

文春オンライン

 日本外交に強い追い風が吹き始めている――そう言ったところでピンとくる日本人がどれほどいるだろうか。

【写真】ZTEのスマホ

 キーワードは「米中貿易戦争」と「ZTE(中興通訊)」の2つだ。

 米中貿易戦争によって日本に追い風が吹くと言えば、たいていの日本人は、アメリカによる制裁で中国経済が停滞し、ゼロサム的発想で日本に利益がもたらされると受け取るかもしれない。

 だが、それほど単純な話ではない。

 貿易赤字問題でトランプ政権がターゲットにしているのは中国だけではない。今月6日には米紙「ウォールストリート・ジャーナル」が、トランプ大統領が対日貿易赤字問題で「(安倍首相との)友好関係も終わる」と発言したと報じている。

 だが、日米の貿易摩擦と米中の貿易戦争の間には、明確に区別されなければならない違いがある。それは前者が単純に輸入枠の拡大などが問われているのに対し、後者は技術革新によってもたらされる次の巨大な市場の覇権をめぐる戦いであるという点だ。

 2つ目のキーワードである「ZTE」への米国製部品の輸出禁止、巨額の罰金といった制裁発動はまさに、その第1ラウンドと位置付けられる。

 アメリカの発動する(もしくは準備する)制裁は実は千差万別で、大きく分けても対メキシコ・カナダ、対ロシア、対イラン、対トルコ、そして対日本、対中国とでは、それぞれ理由も安全保障から経済まで幅広く、目的も同じではない。

 今回、私は 『文藝春秋』10月号 でトランプ政権による対中制裁の本当の意味について詳しく書いた。

日本人は「外交は生き物」と学ぶべき

 理解しなければならないのは、習近平政権の下で飛躍したニューエコノミーが、ついに真剣にアメリカの技術的優位を脅かしていると認識されたことだ。厳しいことを言えば、日本の政治が停滞している間に、米中2強時代に入ってしまったということだ。

 なぜ政治か、といえば、アメリカが中国の掲げた政策「中国製造2025」を問題視していることでもわかるように、中国政府は目標を定め、きちんと成果をあげる「政治のリーダーシップ」で技術革新をリードしてきた。アメリカはそれを攻撃目標にしているからだ。

 ZTEが象徴的に潰された経緯については拙稿を読んでいただきたいが、この状況がなぜ日本にとっての追い風なのかといえば、日本が米中の間に立つ機会となるからだ。

 中国叩きがアメリカの外交のテーマの一つとなったいま、中国が解決策を提示してもこじれ、過剰にヒートアップすることが懸念されている。つまり、米中が現実的な妥結点を見失う可能性が指摘されている。

 求められるのは、日本の“通訳”としての役割だ。これは米朝の間で中国が果たした役割に似ている。

 同時に、アメリカが中国へのサプライチェーンを断ち切った場合の保険として、中国が日本の技術を代替として求める――現実にはアメリカに逆らって、日本が提供することは難しいかもしれないが――からだ。少なくとも中国には、日本との関係を良くしたいという強い動機が生じてくるのである。日本にとっては対中国で様々な問題を解決する好機到来である。

 だが、日本側にそれを受け止めた動きが見られるかといえば、寂しい限りだ。

 なぜなのか。それは発想の根本に国と国との関係が「生き物」であるとの考え方がないためだろう。対米外交だけが外交というような一本足打法になっていることがその典型で、それが故に、好転した場合に優先する政策の整理がなかなかできない。

 一方、中国にとってもアメリカは最も重要な国だ。その意味で対米摩擦を長期化させたいとは考えていない。つまり日本の好機も長くはないのだが、果たして日本はこのチャンスを生かすことができるのだろうか。

富坂 聰/文藝春秋 2018年10月号

最終更新:9/23(日) 11:00
文春オンライン

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