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イプセンの『民衆の敵』が中国で上演中止 当局の検閲か

9/24(月) 7:00配信

NEWS ポストセブン

「近代演劇の父」とも称されるノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンの代表作の一つ『民衆の敵』の上演を予定していた中国・江蘇省南京市の劇場は突然、「9月13日と14日の上演を中止する」と発表していたことが明らかになった。

「民衆の敵」は温泉の発見に沸くノルウェーの田舎町で、温泉に製革工場の廃液が流れ込んでいることが分かり、町の医師が温泉の使用中止を進言するが、町長は費用がかかることを理由に拒否。医師は町民の健康被害を警告するが、町民から疎まれる存在になり、医師の一家は町で孤立する──という物語。

 米紙「ニューヨーク・タイムズ」は「中国当局は演劇が中国の環境汚染問題につながる敏感なテーマとみなして公演を中止させた」と伝え、世界的な名作も当局の検閲にひっかかり、表現の自由がいとも簡単に奪われたなどと批判している。

 中国での公演はドイツの代表的な劇団である「シャウビューネ劇場」が上演。同劇団は2012年から世界各地で『民衆の敵』の上演をしており、今年も9月6日~8日の日程で、北京市の国家大劇院(国立劇場)で公演を行った。

 公演初日の上演後、出演者と観客の交流会が開かれ、出演者から「環境汚染の真相を公表したいという主人公の考えに賛成するかどうか」という質問が出ると、「中国にも環境汚染問題がある」「(中国に)言論の自由がないことが大きな問題だ」との声が多数上がったという。

 その後、劇団側には国家大劇院側から「翌日から交流会は中止するように」との指示が伝えられ、2日、3日目の交流会は行われなかったという。

 さらに、13、14日に南京市で予定されていた「民衆の敵」公演について、南京市の劇場側は8日、ドイツ側に電話で「舞台設備が不備」などとして「上演を中止したい」と伝えた。10日には公演チケットの販売が中止となり、すでに購入した観客に対して払い戻しがなされたという。

 劇団のファイト総監督は米政府系メディア「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」の取材に対して、2014年以降北京、天津、上海など中国各地で公演を行ってきたが、「上演の中止は今回が初めてだ」と語ったうえで「『舞台設備がなくても上演できる』と劇場側に提案したが、劇場側は『当局の判断で中止が決まったので、どうしようもない』と言っていた」と明かした。

 駐中国ドイツ大使館は中国文化省に対して、公演中止について遺憾の意を表明。VOAは「136年前に創作されたイプセンの名作『民衆の敵』が中国の現状と重なり、中国当局の警戒心を高めてしまったようだ」と指摘している。

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