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【System of Arthur Lydiard vol.4】 キロ3分など、エリートランナーたちが ハイスピードで走りながら談笑できる理由

9/26(水) 12:17配信

ベースボール・マガジン社WEB

 多くの五輪メダリストを育てた伝説的なランニングコーチ、アーサー・リディアード。彼のトレーニング理論をリディアード・ファウンデーションの橋爪伸也氏にひも解く。
※『ランニングマガジン・クリール』2017年5月号から2018年4月号まで掲載された連載を再構成しました。

酸素の摂取能力と活用能力

 私たちは誰でも、そのときのレベルによって、使うことができる酸素の量があります。一般的に「最大酸素摂取能力」と呼ばれるものです。

 肺活量の大きい人は、1度の呼吸でたくさんの酸素を肺の中に取り入れますが、ほとんどの人がその酸素の多くを吐き出しています。これは、肺に入った酸素をピックアップできていないからです。

 肺に取り込んだ酸素をいかに多く、運動している筋肉に運ぶことができるか。つまり、酸素の「運搬屋」ともいえる赤血球と、大きくて力強いポンプ役の心臓、体中に張り巡らされた血管網といった、循環器系の発達が「酸素摂取能力」の大事な要素となるのです。

 そしてもうひとつ、おそらく最も重要で、一般的に見逃されている要素ですが、肺から運び出された酸素が、どれだけ「実際に運動している」筋肉群の中で活用されるか。昨今、クロストレーニングと称して、走る以外の運動をランニングの代用にしようという傾向が高まっています。「どちらにしても、酸素摂取能力を高めるという意味では同じ効果だ」という考えもあります。しかし、例えば、酸素の活用能力が両肩、両腕に集中している場合、脚を動かす助けにはなりません。

 このように、筋肉内での酸素活用能力を左右する要素が、運動筋肉内における毛細血管網、そして運動筋肉内のミトコンドリア(※細胞内の構造物のひとつで、有酸素能力と密接に関与)の大きさと数なのです。

2つの運動の境目

 最大酸素摂取能力内で運動をしている限り、その運動は「有酸素運動」ということになります。つまり、酸素を吸収、運搬、活用する能力の上限以下のレベルで運動をしている場合を「有酸素」と呼びます。

 また有酸素運動では、エネルギー源としてのグルコース(=単糖)分子1個から、実際の燃料としてのATP(アデノシン三リン酸=筋肉を動かす際のエネルギー源)が36個作られます。この状態を、アーサー・リディアードは「安定状態(SteadyState)」と呼んでおり、心拍数や呼吸は高いながらも安定しており、いわゆる「走りながら会話ができる状態」です。

 走るスピードがどんどん速くなると、ある一線で、運動強度が最大酸素摂取能力を超えることになります。この場合、そのスピードで走るために体が必要とする酸素の量を、体が供給できない、つまり「無酸素状態」となります。これは、単に「酸素がない状態」ではなく、「酸素が不十分な状態」を指します。つまり、そのスピードで走るために必要な酸素の「需要」に対して、体が「供給」する酸素の量が追いついていかない状態、ということです。そしてその需給の境界線から、血中に放出される「乳酸」が一気に増えます。

 皆さんはもう「乳酸は悪者ではない」ということをご存じでしょうが、放出される乳酸と同じ数だけ、水素イオンが放出されます。つまり、乳酸がたくさんある状態、というのは体が酸化されている状態なのです。

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