ここから本文です

ムバッペは「W杯優勝の呪い」を乗り越える。「大事なのは次の試合だ」

9/26(水) 9:20配信

webスポルティーバ

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】

◆ムバッペ伝説、第2章(前編)

 フットボール選手のキャリアをもっとも損ないかねない経験のひとつは、ワールドカップでの優勝だ。フットボールの頂点を極めた後、いったい誰が再び地味な努力を重ねる気になれるだろう。

【写真】ネイマール獲得、カタールW杯招致の陰で…「今そこにある疑惑」

 1998年のワールドカップを制したフランス代表選手のほとんどは、1998-99年シーズンのリーグ戦でまったく振るわなかった。当時の代表キャプテンで、現在はフランス代表監督を務めるディディエ・デシャンは、ワールドカップのトロフィーを掲げた後に「身体も精神面も無気力」になったと、後に語っている。

 次のワールドカップ日韓大会で、フランス代表は1次リーグで敗退した。2014年大会までの5大会のワールドカップ王者のうち、4チームが同じ運命をたどっている。

 若いうちにワールドカップを手にすると、影響はいっそう大きくなりかねない。2002年大会で、当時22歳だったパリ・サンジェルマン(PSG)のFWロナウジーニョは、ブラジル代表で世界王者になった。その後しばらく世界一の選手として君臨したが、4年後にはもう下り坂に入っていた。

 だから、彼と同じPSGの若いFWで、フランス代表の一員として19歳で世界王者になったキリアン・ムバッペの今後を心配するのは、まったくおかしなことではない。

 ワールドカップ決勝でゴールを決めて世界一になるのは「最高の夢」だったと、ムバッペは言った。それを達成した今、フランスの小さな町で行なわれるアウェーの試合に出かけることはもちろん、チャンピオンズリーグの試合のためにリバプールへ行くことさえ面倒に思えても不思議はない。

 しかし、ワールドカップ・ロシア大会の決勝から2カ月ちょっとしか過ぎていないというのに、ムバッペは「ワールドカップ優勝の呪い」を乗り越えるだけの可能性を十分に見せている。

 僕たちはまだムバッペのことを知り始めたばかりだ。だからワールドカップ期間中のフランス代表に密着したテレビドキュメンタリーは、とても助けになる。フランスのテレビ局TF1が制作した番組で、ワールドカップ決勝の数日後に放映された。

 このドキュメンタリーにムバッペは、しっかりしていて人気のある選手として登場する。チームメイトたちは、彼の年齢のことをからかって楽しんでいる。

「こいつ、すごいな。こんなことまでできちゃうんだから。まだ15歳だっていうのに!(笑)」

 初戦のオーストラリア戦に2-1で幸運な勝利を収めた後のシーンでは、監督のデシャンが怒りまくっている。「おい、笑っている場合じゃないぞ!」。彼は選手たちに、ハイインテンシティー(高強度)な走りが少なすぎると言う。
 
 それからデシャンはムバッペに向かって、こう言う。「キリアン、君が最低だ。3%だぞ」。この試合でのムバッペの走りのうち、ハイインテンシティーなものは3%しかなかったという意味だ。

 このシーンは、最近のロッカールームで統計が驚くほど多用されていることを示している。だが同時に、ムバッペを知るヒントも与えてくれる。

 まだ10代の彼は、ワールドカップ最初の試合で振るわず、チームメイトの前で監督に恥をかかされた。けれどもその後に、いつもの落ち着いた口調で、カメラに向かってこう語るのだ。

1/2ページ

記事提供社からのご案内(外部サイト)

Sportiva

集英社

スポルティーバ
10月31日(水)発売

定価 本体1,593円+税

フィギュア特集『羽生結弦 新世界を拓く』
■羽生結弦インタビュー
■トロント公開練習フォトギャラリー
■アイスショープレイバック

あなたにおすすめの記事