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教科書改訂で毛沢東の文革再評価、習政権の狙い

9/26(水) 12:00配信

日経ビジネスオンライン

 毛沢東がこの世を去ってちょうど42年目の9月、党中央教育部傘下の人民教育出版社が中学校二年生用の歴史教科書下巻の改訂版を出した。この教科書では文化大革命が毛沢東の“錯誤”であったという表現を、毛沢東の“苦労と探索”という表現に書き改めていた。文化大革命は「十年の大災難(浩劫)」から「十年の艱難辛苦の探索と建設成就」に言い換えられた。これは2月に出版された歴史教科書上巻に続く改変である。教育部によると、2017年秋の国家教育重大改革の方針に従った改変という。これは中国の知識人たち、そして国際社会に少なからぬ衝撃を与えている。いまさら文革を美化しようという習近平政権の狙いは何なのか。毛沢東を全く瑕疵の無い領袖に再評価する意味は? 中国の歴史問題、教科書問題の背景を考えて見たい。

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 これまでの旧教科書では、文革について「20世紀60年代、毛沢東は党と国家が資本主義の復活の危険に直面しているという誤った認識を持った。資本主義の復活を防止するために、彼は文化大革命の発動を決定した」と説明している。

 これに対して新教科書では、「誤った認識(錯誤認為)」の錯誤の二文字を削除し「20世紀60年代なかば、毛沢東は党と国家が資本主義復活の危機に直面していると認識し、『階級闘争をもってこれを改める』と強調し、文化大革命を通じて資本主義の復活を防止しようと考えた。それで1966年夏、文化大革命が全面的に発動したのである」と書き改めた。つまり毛沢東の認識は間違っていなかった、と言うのが中国共産党の正式な見解となった。「文化大革命の十年」という旧教科書での章名も、新教科書では「艱難辛苦の探索と建設成就」と改められた。文革は、中国において近代建設成就のために必要な苦労であったというわけだ。

 これ以外にも、新教科書では文革について「動乱と災難」という表現を削除したり、「世の中には順風満帆で事業が進むことはないのだ」といった文革の罪悪を言い訳するような修飾表現が付け加えられたりした。文革小組ができたいきさつの中での党中央の役割や二月逆流に関する記述なども削除された。

 なぜ今更、習近平が文革を美化、あるいはその悲劇を淡化しようとしているのか。理解の仕方としては二つある。一つは習近平の個人的文革経験からのアプローチ。もう一つは中国における歴史というものの考え方である。

 習近平が文革について、非常に深い思い入れを持っていることはかねてから指摘されていた。習近平が愛用するスローガンやキメ台詞には「党政軍民学、東西南北中、党が一切を指導する」といった文革時代に使われたものが多く、習近平が下放された先の陝西省北部の梁家河の経験を美化するようなラジオドラマを作らせたりもしている。また、毛沢東時代の前半30年、後半30年ともに過ちはなかったという発言もしており、毛沢東を完璧な英雄だと見ているようでもある。

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