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李登輝が「日本の若者」と話したがる2つの理由

9/29(土) 12:30配信

Wedge

台湾の元総統・李登輝さんが、今でも日本の若者と積極的に交流しているワケとは――? 唯一の日本人秘書である早川友久さんが、李登輝さんの言葉の真意を読み解きながら、その素顔を明かしていきます。

 李登輝のもとを訪れたいと希望する日本人は多い。95歳となり、体力的に無理がきかなくなってきた最近こそ、受ける来客数はセーブしているが、相変わらず日本からの来客は多く、毎週のようにアレンジされているときもある。

 そばにいる私から見ると、はっきり言って李登輝は年寄りらしくない。アメリカ留学の経験もあるから、ハンバーガーも食べるし、暑い日などは来客が終わると「コーラが飲みたい」などと言ったりもする。常にNHKニュースを見ているし、日本から送られてくる月刊誌にも目を通すから、最近日本で流行っているものも良く知っている。何か思い出せないことがあると「ちょっとそのモバイル(スマートフォンのこと)で調べてくれんか」と言ったり、来客に「私のフェイスブックがあるよ。今度見てごらん」などと言って驚かせたりする。

 とはいえ、李登輝はもともと農業経済学という、数字を扱う学者だったわけで、米国留学時代には統計学の一環でコンピューターにも触れているから、年配者だからコンピューターには疎いだろうと、思い込むのは早合点だ。時にはタブレットを手にして「(指を)こうやって下げていけばいいんだな」などと自分で写真を見たりしているのを見ると、新しい技術やモノに対する「忌避感」よりも「好奇心」や「関心」のほうが強いことがよく分かる。そうした強い「好奇心」と、日台関係の利益になることが何か出来ないかという思いが、日台のIoT同盟を呼びかけたり、台湾和牛の研究推進の原動力になっている。

李登輝が「日本の若者」と話したがる2つの理由

 そうしたこともあって、李登輝は特に若い人と話すのが大好きだ。大学生のグループがやって来たりすると時間を忘れて話し続けることも頻繁だ。そこには2つの理由がある。ひとつは、これから日本という国を背負っていくのは若い人たちだという思いがあることだ。

「日本は台湾の生命線」と考える李登輝にとっては、未来の日本がどの方向に進むかは、台湾の将来に直結する。これから日本を引っ張っていく若い世代に伝えたいこと、話しておきたいことが山ほどある、というわけだ。そもそも、李登輝は「アジアで完全な民主主義が実現しているのは日本と台湾くらい。この両国が手を携えてアジアを牽引していくべき」と従来から主張している。

 もうひとつは、今の若者が何を考えているかを直接聞きたい、というものだ。前述したように、年配者らしくない、柔軟な頭を持つ李登輝であるから、若者の考えや意見を軽視するようなことはしない。むしろ、彼らがどんなことを考えているのか、どんな意見を持っているかを聞くことによって、自分の考え方や意見が、現在の政治とどう乖離しているのかを見極めようとしているのだ。

 実際、日本から来る若者の表敬訪問を控えると、李登輝は「今の日本の若者が悩んでいることはなんだ。不満に思っていることはなんだ」と聞きながら「何を話すべきかなぁ」と何日にもわたって頭を悩ませている。いかにして日本の若者に自信を与えるか、日本にとって台湾がいかに重要な存在か、なぜ日本こそがアジアのリーダーになるべきか、をどうやって分かりやすく理解させるか、毎度考え込んでいるのだ。こうした若者に対する温かい気持ちは、もちろん台湾の若者に対しても同様である。

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最終更新:9/29(土) 12:30
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