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緊急避妊薬(アフターピル)のオンライン処方に踏み切った理由

10/7(日) 8:00配信

日経トレンディネット

 性交後に飲む緊急避妊薬(アフターピル)が手軽に手に入るようになることについて賛否両論があるなか、オンライン処方を始めたナビタスクリニック新宿の久住英二医師になぜオンライン処方に踏み切ったのかを聞いた。

【関連画像】出典:厚生労働省「平成28年度衛生行政報告例の概況」

●緊急避妊薬とはなにか

 緊急避妊薬は「アフターピル」「モーニングアフターピル」「プランB」などとも呼ばれる服用する飲み薬のこと。日本では現在、医師による処方が必要となる医療用医薬品(処方薬)だ。

 性交渉でコンドームに穴が開いた、外れたなど避妊具の装着不備や経口避妊薬の服用忘れなど、避妊措置に失敗した場合や、避妊措置を講じなかった場合に、望まない妊娠を回避するために緊急的に使用する。通常は産婦人科を受診し、院内で薬を受け取るか、もしくは院外処方箋を発行してもらい調剤薬局で受け取る。性犯罪の被害に遭ったときに事後の避妊手段として使われる場合は、外傷治療や感染症検査も必要なため救急外来を受診し、処方してもらう。

 欧米に遅れること約10年、日本で初めての承認薬にして現在も国内で唯一製造・販売するあすか製薬の「レボノルゲストレル(商品名ノルレボ錠0.75mg)」は2011年5月に発売された。性交後72時間以内に1回1.5mgを飲んで、黄体ホルモンで排卵を抑制したり、遅らせたりして妊娠しにくくする。副作用は出血や吐き気など。性交後72時間以内に飲んだときの妊娠阻止率は国内外の臨床試験で約8割。飲むのが早ければ早いほど良いといわれている。

 1回の費用は約1万5000円。自由診療なので、医療機関ごとに費用は異なり、2万~3万円が多い。ノルレボの売上高は年間11億円に上る。

 なお緊急避妊薬は「計画的」な避妊法がうまくいかなかった時に使うバックアップであり、毎回頼るものではない。

2017年、市販化が見送られた理由は「知識不足」?

 実は2017年7月、医師の処方箋が必要な処方薬から、処方箋不要のOTC(大衆薬)に転用した「スイッチOTC」化を検討するための「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で、ノルレボの市販化も検討されていた。しかし「時期尚早」として見送られた。

 理由として検討会の委員らは「欧米に比べ日本では経口避妊薬に対する知識や性教育が不足している(同薬の妊娠阻止率は約80%で排卵周期によりこの確率はさらに低下する、“緊急避妊薬=100%避妊できる”と誤解されるなど)」「薬剤師ですら十分な性教育を受けておらず、消費者にきちんと説明できるか不明」「日本産科婦人科学会が現在、処方時に求めている同意書の取得が困難」といった意見が挙がっているとした。

 一方で緊急避妊薬に関するパブリックコメントは同年9月11日から10月10日まで受け付けられ、全部で348件が集まり、賛成が320件、反対はわずか28件だった。

●なぜ必要なのか

 「知らないのは愚か、知らせないのは罪」。先進国ではこういわれる緊急避妊薬。フランスでは必要とする高校生に養護教諭が無料で配布できるようにしていたり、米国では処方箋なしでドラッグストアなどで購入可能になっている。

 「コンドームに穴が開いてしまった」「性交渉の途中からコンドームをつけた」「コンドームが外れた」「酔った勢いで避妊せず性交渉した」といったことが起こるかもしれない。あるいは性犯罪に巻き込まれることがゼロとはいえない。いずれにしても誤った知識や行動、ハプニングの結果、望まない妊娠は日常的に起こっているが、それでも先述のとおり、日本では医師による処方が必要だ。

 すぐに病院に行くことが困難だったり、週末をはさんでしまったりしても、現状では緊急避妊薬は簡単には入手できない。例えば妊娠を望まない女性が緊急避妊薬が時間内に入手できず、服用できなかった場合、妊娠の可能性を考えて次の生理が来るまで毎日不安の中で過ごして、どうしようもなくなったら人工妊娠中絶手術を受けるしかないということになる。

 緊急避妊薬で人工妊娠中絶手術が避けられれば、女性の心理的、身体的負担も減らせるのだが、72時間以内で、しかも早ければ早いほどいいという時間的制約があるため、アクセスの良さは必須となる。

 厚生労働省によれば日本における人工妊娠中絶件数は、2016年度で年間16万8015件。年齢階級別にみると最も多い層が「20~24歳」で3万8561件、次いで「30~34歳」が3万4256件、「25~29歳」が3万3050件、「35~39歳」が3万307件、「20歳未満」は1万4666件で「40~44歳」の1万5782件より少ない。

 ちなみに同年の出生数は97万6979人。この数字を考えれば、必要性は確かだろう。

 なお、緊急避妊薬の効果は一時的で、将来の妊娠には影響せず、一度着床した受精卵を取り除く医学的な妊娠中絶ではない(つまり妊娠していた場合は中絶効果はない)。また緊急避妊薬を飲んでも妊娠した場合、生まれた子どもに影響があったという報告はこれまでない。

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