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薬物依存めぐる現状と「刑の一部執行猶予」制度 石塚伸一

10/8(月) 20:57配信

創

若者より中年の薬物依存が増えた

 薬物依存問題の専門家として知られる石塚伸一・龍谷大学犯罪学研究センター長には、本誌は、これまでも何度かインタビューを行い、いろいろな事例について相談もしてきた。今回は、2016年に再犯防止のために「刑の一部執行猶予」制度が導入された後、実際にどう運用されているのか、日本における薬物依存の実態はどうなっているのかなど、お聞きした。
 単なる処罰だけでなく治療のための方策をどうするかが今大きな課題になっているが、現実はいったいどうなのだろうか。

――薬物依存といってもいろいろな薬物がありますが、その中で覚醒剤は今どのくらい浸透しているのでしょうか。
石塚 実は覚醒剤は、今は若い人たちの間にはあまり浸透しておらず、使っているのは中年が多いのです。その意味では高橋祐也さんもその例かもしれません。
 覚醒剤は1パケット(小袋)数千円で複数買うとすぐ1~2万円になるので若い人には少し高いんです。だから最近、多いのは向精神薬等の処方薬です。保険がきくと安く手に入るので、本来なら処方薬になるようなものを使っている人が多い。危険ドラッグと呼ばれるものも輸入が減っています。マリファナ(大麻)が最近増えているという人もいます。カナダやアメリカの一部の州ではマリファナが合法化され、コカ・コーラに入れるという話もありますね。乱用物質が多様化する中で、若い人たちの可処分所得が少なくなっているので、高価な覚醒剤を手に入れて依存にまで至るような使い方をするというのは、なかなかできないのです。
 もっと安価な物質依存の形態としてはガスがあります。ガスコンロやライターのガスといった、安価でホームセンターなどで簡単に手に入るようなものを使っている人もいるようです。
 それに、覚醒剤というのはやはり一定の人間関係から使い方を教わるものです。今はそういう関係をもたず、孤立している人が増えてきていますよね。覚醒剤文化に染まるチャンスすらないというような時代です。
 一昔前は、男の人の場合だと、20代に入ってから覚醒剤を使うようになり、25~26歳で依存症、27~28歳で捕まって刑務所に入るというライフコースがありました。今はそういうコースは歩まず、たとえば不安があるといって抗うつ剤を使ったり、そういうものに依存する例が増えています。ネットで薬も入手できるし、一人でずっとゲームをしているというように、孤立している人たちの依存が問題となっている中で、覚醒剤はあまり流行らないんです。
 そうなると、かつて覚醒剤を使っていたような人たちが40~50代にかなりの数いる。60代で捕まる人もいますが、こういう人たちは何度も捕まっている人たちです。そういう人たちが犯罪統計上1万人くらい。少し前は1万2~3000人くらいで安定していたのですが、少し減ってきています。
 法務省が再犯防止に向けた総合対策をつくって、刑務所に再入所してくる人の数を20%ほど減らすと言っています。覚醒剤使用による刑務所への再入所を防ぐことによって、再入所者数を減らすということを進めています。その一つとして、「刑の一部執行猶予」が2年前から導入されているわけです。

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最終更新:10/8(月) 20:57

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