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本庶佑さんのノーベル賞受賞が日本に突きつけた「重い課題」

10/9(火) 8:00配信

現代ビジネス

 ノーベル財団は先週月曜日(10月1日)、京都大学の本庶佑特別教授ら2人に2018年のノーベル生理学・医学賞を授与すると発表した。評価されたのは、抗がん剤、外科手術、放射線治療の3種類だったがん治療の世界に、ヒトのカラダに備わる免疫の仕組みを利用してがんを叩く「第4の治療法」の道筋をつけたこと。

 その仕組みを応用した治療薬の第1号は、小野薬品工業がアメリカの製薬大手ブリストル・マイヤーズスクイブと共同で開発し、2014年に世界に先駆けて日本で発売した「オプジーボ」だ。

 当時は皮膚がんの薬として発売されたが、その後、肺や胃など7種類のがんの治療にも効果があることがわかり、すでに60カ国以上で承認されているという。ただ、こうした新しいタイプの薬は、従来と異なり薬価が桁違いに高く、医療保険制度の存続を脅かしている。

 また、2000年代に入って日本は日本人のノーベル賞受賞ラッシュに沸いてきたが、実はその裏で、将来、ノーベル賞の受賞候補になるような基礎研究が先細っているという。

 本庶さんのような世界に誇れる研究者を絶やさず、その成果を社会として享受していくには何が必要か。今週は、その処方箋を考えたい。

福音と悲鳴

 本庶さんの授賞理由は、「免疫抑制の阻害によるがん治療法の発見」だ。本庶氏はまず1992年に、免疫細胞の表面に「PD―1」というたんぱく質が存在することを発見、その後、そのPD-1ががん細胞をたたく免疫機能を抑える現象を発見した。

 この研究を画期的な新薬オプジーボの開発に繋げたのが、関西を地盤とする中堅製薬会社の小野薬品工業だ。

 ただ、発売時のオプジーボの価格は100ミリグラム当たり73万円。仮に1年間使用した場合、約3500万円も必要な計算だった。このため、2015年末になって、オプジーボの保険適用範囲が肺がんにも広がった際には、「患者5万人が使うと年1兆7500億円かかる」との試算が明らかにされ、健康保険組合などから「保険料の引き上げが避けられなくなる」と悲鳴があがる騒ぎになったという。

 そこで、厚生労働省は特例で、定期改定を待たずに2017年に薬価を半額に引き下げる措置をとった。今年11月にはおよそ17万円と発売時の4分の1に引き下げられるが、それでも患者1人に年間800万円程度が必要と、依然として高価なことに変わりがない。

 日本では薬として承認されれば、保険適用になるのが原則だ。このため、超高額の薬価は、医療保険の財政をストレートに圧迫する。例えば、現役世代の薬代を含む医療費の自己負担はかかった医療費の3割だが、高価な薬や診療には所得に応じた手厚い高額療養費制度もある。現行制度では、医療費が高くなるほど、医療保険の出費も大きくなる仕組みになっている。

 注目すべきは、今後、オプジーボに限らず、白血病の「キムリア」、リンパ腫の「イエスカルタ」、網膜疾患の「ラクスターナ」など、画期的な新薬が続々と日本でも使える可能性があることだ。こうした高価な新薬は、患者にとって福音である一方、医療保険の持続性を危うくすることも明らかである。

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最終更新:10/9(火) 14:55
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