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日中も90分ごとに眠くなるワケ

10/12(金) 12:31配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

昼食後の眠気も「満腹になると眠くなる」のではなかった

 睡眠中にレム睡眠とノンレム睡眠が交代しながら出現することはよく知られている。まず睡眠の前半では深いノンレム睡眠(徐波睡眠)が多く、睡眠後半になるにしたがって徐々に浅いノンレム睡眠が主体になる。ノンレム睡眠に代わって睡眠後半に幅をきかせてくるのはレム睡眠である。明け方になるに従ってその持続時間が長くなり、レム睡眠中に見る夢も鮮明でストーリー性のある内容になる。

寝てはいけない「睡眠禁止ゾーン」とは

 レム睡眠は一日の視点から俯瞰すると明け方から午前中にかけて出現しやすく、夕方過ぎから宵の口にかけて出現しにくいという約24時間周期の概日リズム(サーカディアンリズム)性をもっている。休日の朝に二度寝をすると心地よい夢を見ることが多く、逆に晩酌後の居眠りではあまり夢を見ないのはこのようなレム睡眠のリズム性による。

 ただし、もう少しミクロな視点で見るとレム睡眠は入眠後に平均90分周期で出現し、通常一晩に4、5回のレム睡眠が見られるというより短い周期のリズム性も併せ持っている。このような24時間よりも短い周期(一般的には数十分~数時間)をもつ生体リズムをウルトラディアンリズムと呼ぶ。

 レム睡眠に限らず、性ホルモンや心拍をはじめ多くの内分泌機能や自律神経活動にウルトラディアンリズムが認められる。ウルトラディアンリズムは、温湿度をコントロールし、食事を取らず、安静にしていても認められるので、体内(おそらく脳内に)そのジェネレーターがあると考えられてきたが、これまでその発現メカニズムは不明であった。最近、この疑問の解明に近づく研究成果が発表されたのだが、その前にウルトラディアンリズムについてもう少し詳しく解説しよう。

90分周期のほかに、3~4時間の周期も

 日中の眠気や注意力、作業能率、脳波の周波数などの脳機能にもレム睡眠に似たウルトラディアンリズムが認められる。例えば、外部からの刺激を統制した環境下で、脳波活動を10分おき20分おきなど細かく分析すると眠気の指標であるθ波の活動がまるで日中にもレム睡眠が持続しているかのように約90分で高まることが明らかになっている。

 レム睡眠の発見者でもあるシカゴ大学のクライトマン教授(当時)がこのような覚醒中のウルトラディアンリズムの存在を最初に提唱し、基礎的休止-活動リズム(Basic Rest-Activity Rhythm)と名付けた。その後の研究で、90分周期のほかに、その約2倍の3~4時間周期のウルトラディアンリズムの存在も確認されている。

 覚醒度は仕事の退屈さ、ストレス、睡眠不足、騒音などさまざまな環境条件の影響を受けるため、眠気のウルトラディアンリズムを普段の生活で自覚することは少ない。とはいえ、人の行動にウルトラディアンリズムが影響している可能性を思わせる興味深い研究もある。喫煙者に単調な作業を長時間行わせ、その間に自由に休憩を取らせると90分~120分の間隔で「一服つけに」休憩を取ることが多いという研究報告もある。詳細なメカニズムは不明だが、ウルトラディアンリズムによって周期的に強まる眠気や集中力低下を飛ばすためにニコチンを摂取していると考えても不自然ではないだろう。

 サーカディアンリズムの発現メカニズムについては過去30年間に爆発的に研究が進み、その基盤をなす時計遺伝子の発見に対して昨年度のノーベル生理学・医学賞が与えられた。一方、ウルトラディアンリズムについてはこれまで全く不明であったのだが、ごく最近、北海道大学の研究グループがそのメカニズムの一端を解明したと発表した。

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