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ムロツヨシ、本当の適役は“2枚目”? 『大恋愛』『今日から俺は!!』2人のムロを堪能できる秋

10/12(金) 6:20配信

リアルサウンド

 カタカナ5文字でムロツヨシ。得意料理はムロ鍋、ムロしゃぶ。キャリア23年、42歳でエランドール新人賞を受賞するムロツヨシ。今、最もふざけてほしい俳優といえば、ムロツヨシをおいて、ほかにいないのではないか。

一時、“ムロが心に棲みついた”で話題に【写真】

「あの人がいなければ、ふざけたことをあえてクソ真面目にできるようなことはなかったと思います」

 エランドール新人賞の受賞スピーチで、このブレイクのきっかけをくれたのは福田雄一監督だったと振り返るムロ。売れていないにも関わらず、福田が「好きなようにやっていいよ、ムロくん」と背中を押したのだ。その日から周りの見る目が変わり、名前を覚えてもらうようになった、と。

 以来、『勇者ヨシヒコ』シリーズ(テレビ東京系)、『銀魂』、『50回目のファーストキス』など、数々の福田組作品で、クセの強い役柄を演じてきた。そのキャラクターは、福田組以外の作品でも遺憾なく発揮されていく。大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK総合)をはじめ次々と話題作に出演。個性的な演技に、ムロが画面に出るだけで「お!」と思う人も増えていったことだろう。ドラマ『きみが心に棲みついた』(TBS系)では、ドロドロなストーリーにおける一服の清涼剤となり、一部では“ムロが心に棲みついた”と話題になるほど人気を呼んだほどだ。

 そんなムロツヨシは、今期も2本のドラマに出演する。ひとつは、ムロの良さを誰よりも知っている福田組による『今日から俺は!!』(日本テレビ)だ。今回教師役を演じるムロは、誰もが往年の学園ドラマを思い浮かべずにはいられない特徴的な長髪センター分けで登場。だが、いけしゃあしゃあと「モノマネは一切しておりません」とコメントするなど、ムロツヨシワールド全開となること間違いなしだ。

 そしてもうひとつの作品は、今夜スタートする金曜ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)だ。こちらのムロは、いつものムロを期待していると、少々おふざけが足りなく感じるかもしれない。ムロが演じる間宮真司は、親に捨てられた過去を持つ男性。自らの不幸を自ら救うように小説を書きはじめ、21歳で小説家デビューするも、2作目以降が鳴かず飛ばずで、現在は引越し業者のアルバイトをしている40歳だ。

 この役柄、どこかブレイクする前のムロに近いものを感じずにはいられない。ムロツヨシ自身も、幼いころに両親が離婚。父親が親権を持ったのだが、親戚に預けて出ていってしまったという過去を明かしている。役者を志し、20年ほど続いた下積み時代には、数々のアルバイトを経験。本作についてムロ自身も「20代のときにやっていたバイトが、ほぼ今回の役の仕事になりますんで、重なる部分もあり、ちょっとだけ照れくさい気持ちもあります」と語っている。ラブストーリーの名手・大石静の完全オリジナル脚本なだけに、ムロツヨシの半生が少なからず反映されているのではと、深読みしてしまう。

 「“僕は幸せです”という顔をずっとしていました。悲壮感を消す作業をしていましたね」。いつもと変わらぬ明るさで幼少期を語るムロに、ついチャールズ・チャップリンを重ねてしまう。稀代の喜劇王と称されたチャップリンも、両親の愛情に恵まれない子供時代を過ごし、職を転々とした過去を持つ。「笑いとはすなわち反抗精神である」とはチャップリンの名言のひとつだが、打ちひしがれるような日々の中で、いかにまわりを笑顔にするかが、彼らには共通しているのではないだろうか。

 人生を通じて、それを考え続けてきた人の想像力は強い。きっとムロのコメディが心地いいのは、彼の持つ周りへの愛に満ちあふれているからなのだろう。「たまたま飲み屋で会ったおじちゃんとも“あなたを信用しています”というところから入る」、「友だちの定義は裏切られてもいい人」。彼の言葉に迷いがないのは、人と人とが笑い合うためには愛を求めるのではなく、与えることが出発点であることを知っているからに違いない。そう思うと、手のひらから砂がこぼれていくように記憶を失っていく恋人を、決して絶望せず健気に明るく支えていく間宮真司に、彼以上の適役はいなかったのではないかとすら思えてくる。繊細で、物静かで、愛情深い、2枚目。私たちの知らなかったムロツヨシがあぶり出される作品になりそうだ。ムロらしいムロと、知られざるムロ。この秋は、ムロでいっぱいだ。

佐藤結衣

最終更新:10/12(金) 21:52
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