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「ぶっちゃけ僕は弱い人間」だが。内川聖一が大舞台にやたら強い理由。

10/12(金) 7:01配信

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 「このボールを、こんな風に打てばホームランになりやすい。あの時自分の中では見えていたんです。だから打った瞬間も別に驚かなかった。あ、やっぱりそうなったかって」

 昨年の日本シリーズ第6戦の9回裏。あれは本当に劇的な一発だった。

 ホークスは追い込まれていた。スコアは2-3。1死走者なし。この回先頭のデスパイネが打ち取られ、次いで打席に入ったのが内川聖一だった。

 「あの打席に限っては意外と冷静でした。山崎君との対戦はシリーズで3度目だったし」

 マウンドにはベイスターズ抑えの山崎康晃がいた。過去2打席は2打数1安打。しかし、内川に「勝った」という感覚は残っていなかった。

 「第4戦はショートゴロ。第5戦では三遊間を抜きましたが、引っ掛けたゴロがそこに飛んだだけ。あのツーシームをそう打てば、当然こうなるよなという感じでした」

 もし、デスパイネが出塁していれば「つなぐ打撃を意識した」から、あの同点弾は生まれていなかっただろう。だが、走者なしで回ってきた。自分の後ろは下位打線になる。

フライアウトでも俺の勝ち。

 だから内川は考えた。

 「連打やホームランが出る確率は今の自分の方が高い。ただ、ゴロではダメ。ホームランを打つためには打球を上げないといけない。とにかくフライを打つ。もし、フライでアウトになっても『俺の勝ち』というくらいの割り切った感覚でした」

 その前提条件を頭に思い浮かべながら、内川は打席へ一歩一歩と向かっていった。

 狙い球も絞っていた。過去2打席で「やられた」、山崎のあのツーシームである。

 「フライにするにはストレートよりもツーシームを強引に振り上げること。ただ、あの局面ですから、厳しいところに投げてくるのは分かっていました。だから僕も彼の最高のボールをイメージしたんです」

内角低め一杯の球だけを待って。

 山崎の投げる最高のツーシームは、右打者のインコース一杯、低め一杯に沈む球だ。

 「じつはホームランを打つ前の球もツーシームだったんです。だけど、僕は三塁側にゴロのファウルを打った。しかもバットを折られたんです。結果的にはホームランのより甘い球でした。落ち切れなかった。

 でも、自分が待っていたのはもっと厳しいコースです。だから打てなかった。みんなからは『もっと難しいボールをよく打った』と言ってもらえましたが、僕はあの内角低め一杯の球だけを待っていたから」

 内川は次の球を高々とすくい上げた。打球は左翼席へ大きな放物線を描いた。決して失投ではなかったが、だからこそ、内川は完璧に打ち返せたのだった。

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最終更新:10/12(金) 7:01
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