ここから本文です

吉田輝星、最高の高校ラストゲーム。「金足だからしょうがないでしょ」

10/12(金) 11:31配信

Number Web

 10月10日、金足農高の吉田輝星がプロ志望を表明した。今夏の甲子園で金足農を秋田県勢103年ぶりの決勝に導き、日本中を沸かせたエースが、プロの世界に挑戦する。

【写真】12年前、948球を投げても涼しい顔だった斉藤佑樹。

 その吉田は約1週間前の10月2日、福井国体で高校最後の公式戦に臨んでいた。

 福井国体は台風24号の影響で日程が短縮され、準決勝以降が打ち切りとなった。金足農の試合は、勝っても負けても2回戦の常葉大菊川高戦1試合のみとなり、そこで勝てば1位が決まる。

 吉田にとっては、宮崎で開催されたU18アジア選手権の台湾戦以来、約1カ月ぶりの公式戦のマウンド。この日は今大会最多の8257人の観客がつめかけ、金足農のベンチの上にはカメラやスマートフォンを構えたファンが幾重にも重なった。試合前のスタメン発表で「3番・ピッチャー、吉田君」とコールされると、ひときわ大きな拍手が起こった。

球威、自信、ふてぶてしさ。

 しかし吉田がマウンドに上がり、セットポジションに入ると、甲子園のようなブラスバンドの応援がない福井県営野球場はシーンと静まり返り、観客はその投球を固唾をのんで見守った。

 まさに、吉田の時間。

 吉田はその時間を自在に操った。ポンポンとテンポよく投げ込んだかと思えば、じりじりするほど長い間を取る。矢のような牽制もあれば、気の抜けるような緩い牽制も見せる。

 「マウンドは俺の縄張り」

 これは甲子園の決勝前夜、吉田が帽子のつばに太字で書き込んだ言葉だが、この日の吉田はまさにその言葉を体現していた。

 U18アジア選手権では、調子の上がらない立ち上がりを捉えられ、韓国戦、台湾戦で敗戦投手となった。しかしこの日は、「疲れがしっかり抜けたので、全然違う」と本来の球威を取り戻し、表情にも自信とふてぶてしさが戻っていた。

「152キロ、これは出たなと」

 初回からストレートが走った。145キロ、146キロ、148キロと球が勢いを増すたびスタンドはどよめいた。そして2回表、常葉大菊川の漢人友也を、自己最速を2キロ更新する152キロのストレートで三振にとり、球速表示を確認した吉田はガッツポーズを見せた。

 「今日はしっかり腕を振れていて、調子は悪くなかったので、150も目指せるかなと思っていた。あの時は球場がざわついて、自分としてもリリースの時の手応えがあったので、『これは出たな』と。最後の試合で出せたのは嬉しいです」

 ざわついていたのは相手ベンチも同じだった。

 常葉大菊川の高橋利和監督はこう振り返る。

 「球がうなってました。横から見ていると、彼のボールは一度下がってから、浮き上がるイメージ。『なんじゃこの球』と思って(苦笑)。これは当たらないぞと」

1/3ページ

最終更新:10/12(金) 13:01
Number Web

記事提供社からのご案内(外部サイト)

Sports Graphic Number

文藝春秋

963号
10月11日発売

定価590円(税込)

大谷翔平 旋風の軌跡。

【スペシャルインタビュー】 大谷翔平「激動の1年を語る」
【全米が見た二刀流】 イチロー/バーランダー