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昨季逃した世界一になるために。セットアッパー前田健太の心意気。

10/12(金) 17:01配信

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 前田健太が入団から3年連続でリーグ優勝決定シリーズ進出を果たした。過去、日本人選手として、3年連続でリーグ優勝決定シリーズ進出を決めた選手はいなかった。

 ヤンキースに在籍した松井秀喜は3年目に地区シリーズで敗退、レッドソックスに在籍した松坂大輔も同様だった。高いレベルで安定したパフォーマンスを継続できる力をドジャースも前田も持っているからこその名誉であろう。

 前田は自身の葛藤を忘れてしまったかのように謙虚に感謝の気持ちを表した。

 「本当にチームに恵まれている。チームメイト、監督、コーチに感謝したい。本当にいいチームに入れて良かったと思います」

王手をかけた試合での力勝負。

 2勝1敗と王手をかけたブレーブスとの地区シリーズ第4戦。前田の出番はようやくにやって来た。

 役回りは守護神ジャンセンに勝利の襷を渡すセットアッパー。4点リードの8回、簡単に2死を取ったものの連打を許し一、三塁。打席には通算152本塁打の代打デューダを迎えた。カウントは3ボール1ストライク。93マイル(約150キロ)の直球に快音を残した打球が右翼ポールのはるか上を超えて行った。

 ファウルに思わず命拾いとなったが、この後が前田の真骨頂だ。

 「力勝負だと思いました。ストライクゾーンでしっかり強い球を投げ込もうって自分で決めていました」

 あわや3点本塁打の特大ファウルを打たれた次の1球に同じ球を選択する勇気と実力。チェンジアップを頭に入れながら待ったデューダに対し、前田は思い描いた1球を投げ込んだ。93マイルの直球に打球は詰まった中飛。雄叫びをあげ、ジャンセンへ勝利のチケットを手渡した。

カーショウが歩み寄りビールを。

 歓喜に沸く、喜びのシャンペンファイト。「ブルペンの切り札」ながら、地区シリーズでは1試合の登板のみに終わった。それでもナインは「ケンタ! ケンタ!」と叫び、前田にシャンペンをあびせた。

 通算280本塁打のマット・ケンプが、正捕手のヤスマニ・グランダルが、昨季の新人王コーディー・ベリンジャーが次々と祝福する。その時だった。ビールを片手に近寄って来たのは“孤高”のエース、クレイトン・カーショウだった。

 この3年間、シャンペンファイトでカーショウが前田の元へ自ら歩み寄り祝福する姿は見たことがなかった。カーショウ自身が派手にシャンペンファイトで喜んだ姿も印象にない。その寡黙なエースが前田へ歩み寄りビールをかけた。

 「スコシ、スコシ」

 頭からビールを2度。言葉通り、少しずつかけられた前田は深々と頭を下げ「はい」と最敬礼。いたいけなその姿がかわいかった。

 チームにとって、前田がいかに重要な位置にいるのか。それが良くわかる光景と感じた。34歳のベテラン外野手がシャンペンを思い切り振り回し、女房役は前田の顔をめがけて下から攻め、若きスラッガーは頭の上から豪快に降り注いだ。そして、大エースがそっと労を労う。

 前田が示したチームへの忠誠心にナインは感謝の意を表し、受け入れた仕事を全うする姿に心を打たれた。それがこのシャンペンファイトだと感じた。

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最終更新:10/12(金) 17:01
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