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韓国はウルグアイをも撃破。始まりはW杯ドイツ戦…かつてない期待と熱狂に包まれる隣国の今

10/13(土) 10:54配信

フットボールチャンネル

韓国代表は12日、ウルグアイ代表との国際親善試合に2-1で勝利を収めた。ロシアワールドカップベスト8の強豪撃破を後押ししたのは、ファンの存在だった。元世界王者ドイツを破った、あの日から高まり続ける韓国サッカーの熱狂はとどまるところを知らない。(取材・文:キム・ドンヒョン【韓国】)

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●「ワールドカップなんですか?」

 10月8日はパウロ・ベント監督率いる韓国代表の25人が坡州(パジュ)にあるナショナルサッカートレーニングセンター(NFC)に招集される日であった。事前に告知されてたのは午後3時だったが、選手たちが早く入所するかもしれないという情報があったため、筆者は午後1時過ぎくらいにNFCについた。

 早く行かねば…と思ったのは筆者だけではなかった。およそ20人以上のジャーナリストがすでに集っていた。ペン記者だけでなく、放送局報道関係者も多数見られる。写真記者を含むと約40人くらいの大人数。この日、イギリスから帰国したキ・ソンヨンはこう言った。

「ワールドカップなんですか? こんなに集まられるなんて」

 そう、これが今の韓国におけるサッカーの人気ぶりである。国内リーグへの人気はさておき、A代表への関心は高まりつつある。ものすごいとしか言いようがない。ある話を紹介したい。9月のチリ戦が終わった後、大韓サッカー連盟(KFA)はファン感謝デーを開催した。KFAが予想した来場客はおよそ500人。ソウルから車で約1時間以上離れているNFCでのイベントだったため、KFAもそれほど多くのファンの来場を想定していなかった。

 だが、このファン感謝デーになんと1000人以上のファンが集まった。NFCに1000人を収容できるようなスペースは用意されていない。だが、ファン感謝デーが開催されると聞いて各地方から集まったサッカーファンがすでに行列を作っていた。結局500人以上の人数を受け入れ、より多くのファンがソン・ミンフンやイ・スンウなどの人気選手と触れ合うことができた。今までの韓国サッカーでは想像しがたいことだった。

 間違いなくあの6月のセンセーションからスタートしたものだった。元世界王者のドイツに2-0の勝利を収めてから、韓国は沸騰し始めた。そしてアジア大会での金メダルがそのムードに油を注ぎ、9月のコスタリカ戦やチリ戦での善戦もファンにサッカーの存在感を猛アピールするに十分なものだった。

●史上最速でチケット完売。韓国代表への期待はうなぎ昇り

 だからこそ、12日のウルグアイ戦が大事だった。せっかく盛り上がってきた人気を維持したいというムードがサッカー界に流れていた。キャプテンのソン・フンミンが「代表としての責任感を持ち、国民の声援に恩返ししたい」というのも、サッカーに注がれる関心や人気の大切さを理解した上での発言だった。だから勝利、少なくともいい内容はノルマだった。

 今回のウルグアイ戦に集まる期待も大きかった。3日の午前、一般チケットの1次販売分は20分で売り切れ、2次販売のチケットもおよそ15分で売り切れた。史上最速でのチケット完売だった。ルイス・スアレスが子供の出産に立ち会うため代表に帯同しないという情報が流れても、チケットがキャンセルされることはなかった。純粋に韓国代表を観たいと思うファンが増えたのだ。

 実はこのウルグアイ、韓国にとって厄介な相手だ。A代表では36年前の1982年対戦して以来、7試合連続で白星がない屈辱的な歴史が続いていた。それも1982年に一度引き分けて以降の6戦ではすべて負けていた。

 堅守をベースに、抜群の決定力を持つFWが揃っているウルグアイは、韓国にとって鬼門のような存在だった。4年前の2014年にホームで行われた試合では0-1で韓国が黒星を喫していた。

 だが、ベント監督は物怖じしなかった。彼は11日に行われた公式記者会見で「ウルグアイは確かに強いが、かといっていつでも勝てるわけではない」とし「スタジアムにお越しいただいたファンの皆さんに自分たちの攻撃的なサッカーを見せたい」と意気込んだ。

 戦力は両国ともベスト。韓国はファン・ウィジョが1トップに立ち、ソン・フンミンが左サイドに。ウルグアイはディエゴ・ゴディンやエディンソン・カバーニ、ロドリゴ・ベンタンクールなど豪華な顔ぶれが登場。出せるカードはすべて出し切った状態での戦いになった。

●史上初の勝利。Jからの使者がゴールで爆発

 ウルグアイには時差ボケの影響があるはずだったものの、貫禄が漂っていた。前日練習が軽めの調整のみだった彼らはコンディションが100%でなくとも、堅守をベースとしたサッカーを披露。ソン・フンミンやファン・ヒチャンなどスピードのあるサイドアタッカーを中心に攻撃を展開する韓国はなかなか守備をこじ開けられない。その中でもファン・ウィジョは相手守備と駆け引きし、真ん中に切り込む場面をいくつも作り出した。枠内シュートこそなかったが、積極的な動きにウルグアイの守備も苦労していた。

 後半、試合が動いた。59分にベンタンクールが強烈なシュートを放つも、これはポストを直撃。だが、全体的なムードは韓国が握りつつあった。そして65分。ファン・ウィジョがペナルティエリア内を突破しようとすると、セバスチアン・コアテスにタックルを受けた。守備が何人もいる状況で果敢な突破を試み、PKを獲得したのだ。これで得たPKはソン・フンミンがまさかのキックミス。だが、GKフェルナンンド・ムスレラが弾いたボールに、左から走り込んだファン・ウィジョが詰めて韓国が先制した。ファン・ウィジョのボールへの執着、絶妙なポジショニングは圧巻だった。

 この7分後、アクシデントが起きた。左サイドからロングパスがルーカス・トレイラに送られた。元大宮のキム・ヨングォンがマークするも、スライディングタックルがまさかの空振り。トレイラがその機を逃さずペナルティエリア内に運び、パスを受けたマティアス・ベシーノが冷静に決めて試合を振り出しに戻した。

 1-1で終わるかと思われた79分、値千金の決勝ゴールが生まれた。ファン・ウィジョに代わり、ピッチに入ったソク・ヒョンジュンが高さを生かした。コーナーキックからのボールに鮮やかなヘディングシュート。これがゴール前にいたカバーニーに弾かれるも、手前にいた元ヴィッセル神戸のキャプテン、チョン・ウヨンが押し込んだ。セットプレーでの集中力を切らさなかった結果、ゴールが生まれた。これが決勝ゴールになり、韓国は36年越しに、ウルグアイとの8度目の対戦でようやく史上初めての勝利をもぎ取った。

●熱気を取り戻した韓国サッカー。勢いをどう維持するか

 この日のウルグアイは戦力こそベストだったものの、コンディションが万全ではなかった。だが韓国も欧州組が大半を占め、時差の影響がなかったとは言えない。そんな中で勝ち取った初勝利だからより意義深い。試合が終わった後、ウルグアイのオスカル・タバレス監督は「時差の影響もあり、体力的に苦しかった。次の日本戦に切り替えたい」と日本との試合に関してもコメントした。おそらく日本戦は12日の試合よりも良好なコンディションで戦えるはずだ。だが彼は「韓国の攻撃は猛烈だった。バランスも取れていた」と韓国を褒めることも忘れなかった。

 敵将に称賛されてしかるべき試合だった。攻撃面でミスもあったが、守備面はバランスが取れていた。選手1人ひとりがどうプレーすればいいのか、明確に理解できているような印象を受けた。いつの間にか選手たちに自信もついた。ファン・ウィジョは「自信がついている。だからこそ集中力を失わないようにより頑張れた」と語る。彼だけでなく韓国代表の全員が高ぶっている。だからこそ勝ち取れた勝利なのかもしれない。

 選手たちのプライドや熱き試合を支えるのは間違いなくファンだ。この日の試合は昨今の韓国サッカーの人気ぶりを証明する場でもあった。試合当日は超満員、6万4170人の観客が来場したのだ。ソウルワールドカップ競技場が満員になったのは2013年のブラジルとの親善試合以来5年ぶりのこと。歴代記録からしても合計8試合しかないのはともかく、ここ最近の韓国でのサッカーの立場を考えると、いや、ワールドカップ直前までほとんどの人から背を向けられていたのを考えると、ここ数ヶ月でとてつもなく進化している。

 それほどに韓国代表にかけられる期待度も高まりつつある。チリとの好ゲームの後、ウルグアイに勝ったことも、これからの人気を後押しするはずだ。もちろんこれからは今のムードをどう維持するかが課題。それでも、この内容、この結果が続くけば間違いなく、ホームゲームの満員はこれからも続くはずだ。今の韓国代表はそれを立証している。

(取材・文:キム・ドンヒョン【韓国】)

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