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『新潮45』事変を能町みね子・サムソン高橋が斬る「小川榮太郎クンはセクシー」!?

10/16(火) 8:50配信

女子SPA!

「新潮45事変」。そう名付けたくなるような今回の騒動。同誌8月号の杉田水脈衆議院議員の寄稿と、彼女を擁護する「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」という10月号の特集は、LGBT当事者のみならず、いま、日本で暮らす多くの人々に、大きな衝撃を与えました。

 そのインパクトの強さゆえなのかメディアでは非当事者の声が大きく、LGBT当事者の声が聞き取りづらくなっているような気もします。

 LGBT当事者でもある、ゲイライターのサムソン高橋さんと、出生時の性を男性から変えた女性のマンガ家・エッセイストの能町みね子さん。契約結婚を前提に夫婦(仮)として生活中のおふたりは、今回の騒動についてどんなふうに感じているのでしょうか。

 清濁併せ呑みながら燦然(さんぜん)と輝くおふたりの毒舌もそのままに、3回にわたりお届けします。

◆「生産性」より文章全体がやばい

――大きな批判を受けての休刊によって、いちおう収束したかのように見える、いわゆる「新潮45事変」ですが、おふたりでは今回の件について、どんなふうにお話しされました?

能町みね子(以下、能町):話してないよね。

――えっ!? 意外です。

サムソン高橋(以下、サムソン):そうね。もともと、今回の取材依頼をいただくまでは、杉田すいみゃく……「みお」じゃなくて「すいみゃく」で通すんだけど(笑)、その文章を読んでもいない。

能町:私は、コラムで取り上げるために、わざわざ雑誌を買ってやって読みましたね。でも、8月号の杉田氏の記事は、ことさらに問題だとして取り沙汰されている「LGBTには生産性がない」と書かれている部分は、私としてはたいした話だと感じなくて、むしろ全体のほうがやばかったという結論ですね。具体的なやばさは、あとで添削しますけど(次回記事)。

サムソン:私も、今回のことでみね子から借りて初めて読んだのね。もともと、この件についてはTwitterとかでLGBTの人たちを中心に騒ぎになっているのを見て、「何が起こったのかしら?」と思って、まず杉田水脈のTwitterのページを見てみたんですよ。そうしたら、いきなりヘッダーがはすみとしこのイラスト。

能町:そうなんですよ!

サムソン:私はもうその時点で、「あ、この人やばい人だ」と思って、実はそれから触れないようにしました。正直、「ばっちいし、わざわざ汚いものを見たくない」といった感じなんです。実際に読んでみると、大前提として、思った以上にひどい。文章がどこもかしこも頭が悪い。お話にならない。なんでしょう、どこが駄目っていうんじゃなくて、「とんでもない言説をまともに文章にしてみましょう選手権」があったとすると、その佳作ぐらいの感じよね。

能町:そう、冒頭からおかしい。特集が「日本を不幸にする『朝日新聞』」なもんで、朝日新聞をバッシングするために、「朝日にはLGBTの記事が多すぎる」ことを証明しようと各新聞ごとにどれだけLGBTについて記事にしているかの統計をとったら、なんと毎日新聞の記事が一番多く、朝日新聞は2位でした……じゃあ朝日は別にいいじゃん、ってなるよね(笑)。

サムソン:とはいえ、「日本を不幸にする毎日新聞」だとちょっと弱いから……(笑)。

能町:そう、朝日新聞を叩かないとパンチがない。でも、実際には2位だったので序盤でつまずいて、そこから無理やり立て直そうとするから、朝日新聞の話はあんまり出てこなくなっちゃうんですよね。

サムソン:書くほうも辛かったんじゃないかな。

能町:無理やり感はあるよね。締切までにどうにか体裁を整えたらこういうことになったんでしょうけど。

◆相手にしないという選択肢もある

サムソン:LGBT当事者の人たちは、水脈の書いたものを読んで「怒りに震えた」とか「悲しみに打ちひしがれた」とか言ってたじゃないですか。でも、こんなものを見てショック受けたりするの? なんてナイーブ!と思ってさ。

能町:私はね、何がショックかというと、「新潮ともあろうものが杉田水脈の文章載せんなよ!」ここですよ。

サムソン:そう。たとえば、これが「月刊Hanada」とか「WiLL」だったらスルーされてたと思う。

能町:そう、「あ、いつものアレね」でスルーですよね。ところが、今回は「新潮45」という雑誌で、かつ、小川榮太郎にKAZUYAですよ。

サムソン:カズヤって誰? あ、X JAPANの人が……。

能町:ToshIが洗脳された人じゃないよ?

サムソン:あれは誰だっけ。

――MASAYAですね。

サムソン:そうだった。だから、杉田水脈が書いている時点で、すごくレベルが低くて、相手にするのもおかしいんじゃない。

能町:そういう感じだよね。でも、「新潮45」に載っちゃった以上、仕方ないから、みんながんばって相手にしてあげているんだよ。

サムソン:流れとしては、「新潮45」もどんどん部数が減っていくなかで、なんとか起死回生しようとこういう特集を組んだと。で、水脈の記事も、そもそもは表紙にも出ていない、扱いの大きくない記事だったんですよね。でも、それが一部で反響を呼び、編集部としては「おっ、この路線はいける!」と思ったと。

能町:「売れ線でいってみよう!」と突き進んだら、思ったより「燃えて」しまった。……YouTuberが火薬を使って面白い配信をしてやろうとしたら、はからずも焼身自殺してしまった。そんな趣がありますよね。

サムソン:そういえば、ふたりで少し前にも「焼身自殺だね」って話してたよね。そんなこと言ってたら、数か月後に本当に休刊になってしまった。

能町:YouTuberは火を使っちゃいけないってことですね。

サムソン:「ガソリンに火つけちゃいけないっていうけど、どのくらい燃えるかやってみよう!」で、実際にやってみたら、どわーっと炎上してしまって。

能町:そしてYouTuberのなかでは伝説となった……(笑)。

◆「困ったことに、相手のレベルが低すぎる」

サムソン:それから、あらためてLGBT(運動)ってすごいな、って思ったよ。

能町:こんな目立たない記事まで掘り返したからね。

サムソン:私たちの世代では、1995年の「マルコポーロ」騒動を思い出すよね。「週刊文春」の編集長だった花田(紀凱)さんが雑誌「マルコポーロ」の編集長だったときに、そこで掲載した記事にきっかけに自主廃刊したあの事件。

能町:「ナチ『ガス室』はなかった」だっけ。

サムソン:そうそう。「マルコポーロ」はほんとに、フックだけの雑誌だったんですよね。コラムなんかは面白いのがあったんですけど。だから、作り方としては最近の「新潮45」に似てたよね。特集の記事で「ナチスのガス室はなかった」と主張したものを載せてしまって、ユダヤ人団体からの猛烈な抗議にあって、一発で廃刊が決定してしまった。

能町:それが文藝春秋から出ていた雑誌で、今度は新潮だもんね。

サムソン:だからというか、今回に関しては、そんなに言うこともないんだよね。

能町:困ったことに、相手のレベルが低すぎる。

サムソン:そう。私たち、ちょっとレベルが高すぎて(笑)。この程度だとそんなに論じることもないんですよね。

能町:小川氏の文章も読んだけど、論文ではなくてエッセイでしたね。文人気取りの……。

――「呵呵」(かか)とか書いてありましたね。

能町:そう、「呵呵大笑」の「呵呵」。

サムソン:カカってなに? サッカーの選手?

能町:明治期の文人とかが書く言葉で、「大声で笑う」っていう意味。小川氏は、「(笑)」のかわりに使ってるのかな。

サムソン:さておき、私は、水脈の記事はすべてがだめだったんだけど、むしろ小川ちゃんの記事ほうが好感は抱けると思った。

能町:小川氏のほうは、私もところどころわかることもあったよ。

サムソン:ひどすぎて面白いというのもあったし、自分のエゴが出てるから、エッセイとしては読める。

能町:エッセイとしては、石原慎太郎を読むのと同じ感覚で読めるところはあるかな。こういうおじさんまだいるんだね、って眺める感じで。

サムソン:いくつなんだろうね?

能町:意外と若いんだよ。1967年生まれって書いてあるから、51歳か。

サムソン:同い年だ! 私と小川ちゃん、どこで人生が分岐したんだろう。

能町:あっ、大阪大学文学部卒業だ。だから、アキラ(=サムソン氏)、地理的にもちょっと近いよ。同じ時期を大阪で過ごしてた仲間だよ。

サムソン:近いわ。私は大阪外大出身で、いまは大阪外大は統合されて大阪大学外国語学部になってるから、ほぼ同期といってもいいよ。

能町:じゃあサウナとか一緒だったかもしれない。

サムソン:で、杉田水脈は鳥取大学なのね。

能町:なんか、アキラとの縁を感じるね~(サムソン氏は鳥取県出身)。

サムソン:縁を感じる! 悪く言えない!

◆「ゲイの世界の定説では、◯◯はセクシー」

能町:小川氏の記事で気になったのが、「性には、生物学的にXXの雌かXYの雄しかない」って言ってるところ。

これ、実はXXYやXYYで生まれてくる人もいたり、色々あるので、そこからめっちゃ間違ってる。XXYのクラインフェルター症候群(男性の性染色体が一つ以上多いことであらわれる症候群。精巣の発育障害や無精子症を引き起こすこともある)とか普通に有名なのに、それも知らないんだ、って思った。

サムソン:「雄しべ雌しべ以外に、レズしべとかゲイしべというのは無い」とも言ってるよね。

能町:そう、すごい言葉作ってて(笑)。それと「『朝日新聞を叩く』『嫌韓本を書く』となれば、一定のメンバーが喜び勇んでその言論に馳せ参ずる。手堅いマーケット=支持層があり、安全地帯からどれだけ『敵』を悪し様に語っても許される構図が確立しているからだ」とも書いていて、このあたりは、「この人、わかってて言っていて、その上でこれを書くんだ!」と感じたから、面白いといえば面白かった。

それと、「この人はセックスのことばっかりずっと考えてるのかな?」というエッセイだよね(笑)。

サムソン:私はね、小川榮太郎っていう人がホモフォビアっぽい文章を書いてるって聞いたとき、「あ、こいつきっとイケメン!」って思ったの。

能町:ああ、アキラ的にね。

サムソン:ゲイの世界では定説があるのよね。こういう典型的なホモフォビックなことを書くノンケ男はセクシー、っていうやつ。

能町:じゃあ、小川氏もトラウマを抱えてるかもしれないよね。過去にしつように言い寄られたとか。

サムソン:あっ、そうかもしんない(笑)。たいていね、「自分はアライだ」(LGBT当事者ではないが、LGBTに共感的な人々のこと)とか言ってるノンケの男性は、「イケない」んですよ。

能町:なるほどね(笑)。

サムソン:で、文章を読んで小川氏のチャーミングさがわかったよ。

能町:さすがですね。

サムソン:典型的なスケベオヤジを、ホモが遠くからみて、「ああ~、ちょっといやらしくてイケる!」ってうめいてる、みたいな感じとでも言いますか。

能町:……こんな記事で大丈夫なのかな(笑)。

サムソン:ひどいよね(笑)。

能町:これ、うちらが叩かれるんじゃないの。

サムソン:炎上だよ、逆炎上。新潮方式ですね。

能町:どうしたらいいんだろう(笑)。

 次回、杉田水脈議員の文章に、能町みね子さんの赤字添削が炸裂します!

<文/的場容子 & 女子SPA!編集部 写真/我妻慶一 撮影協力/Campy!bar ASOBi>

女子SPA!

最終更新:10/17(水) 18:15
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