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脳を食べるアメーバ、温暖化で生息域が拡大中

10/17(水) 19:10配信

WIRED.jp

そのときテキサス州ウェイコの気温は、もう少しで28℃になろうとしていた。米疾病管理予防センター(CDC)の環境工学者であるミア・マッティオリが9月27日にウェイコにやってきたのは、温水環境を好むフォーラーネグレリア(学名Naegleria fowleri:ネグレリア・フォーレリ)というアメーバを探すためだった。感染したらほぼ全員が死亡する、脳を食べるアメーバだ。

死亡まで5日!致死率97%の「脳食いアメーバ」

マッティオリは1日をかけて、同地にあるウォーターパーク「BSRサーフリゾート」のさまざまなアトラクションから、50リットルの容器にサンプルを採取していった。それが終わると、水漏れがないことを確認した容器を、二重になった袋に入れ、氷が入っていないキャリー付きのクーラーボックスにしまった。

「ネグレリアは寒さを好まないので、水のサンプルは常温で輸送するのです」と、マッティオリは説明する。クーラーボックスをしっかりと梱包し、クルマでFedExの配送センターまで運んだ。分析を行うジョージア州アトランタの環境微生物学研究所には、一晩で到着する。

最初の症状は風邪に似ている

CDCがウェイコで調査を行った背景には、ある事件があった。

その前の週の日曜に、1,600マイル(約2,600km)離れたニュージャージー州ヴェントナーシティーで、芝刈りをしていた29歳のファブリツィオ・ステイビルが頭痛に耐えられず動けなくなった。彼は発熱と脳の膨れで、アトランティケア・リージョナル・メディカルセンターに収容された。

その後、木曜になってステイビルの髄液にフォーラーネグレリアが見つかり、翌日に彼は死亡した。原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)との診断だった。これらはステイビルを追悼し、PAMについて啓発する基金の設立を呼びかけるGoFundMeのページによる情報だ。

ステイビルを診た医師たちはおそらく、彼が運ばれてきた当初から脳を食べるアメーバを探したわけではなかっただろう。ネグレリアに感染しても、最初の症状は風邪に似ており、髄膜脳炎に特有のほかの症状はあとから出てくる。

それに、PAMは非常にまれなケースだ。CDCでは1962年以降、143件の症例報告しか記録されておらず、平均すると年に3人に満たない(ただし、死亡しなかったのは4人だけだ)。

米国における最後の報告は2016年だった。「ニュージャージー州の住民で見つかったのは、今回が初めてです」と、同州の疫学者、ティナ・トランは語る。トランはステイビルを診た医師たちおよびCDCと協力して、彼が感染した場所の特定にあたった。

「普通は水が温かい南部の州に多いのです」とトランは言う。テキサス州のような南部の州だ。

医師たちは、ステイビルが最近、ウェイコのBSRに旅行して戻ったところだったことを知り、彼はそこでフォーラーネグレリアに感染したのだろうと推測した。そこでCDCのマッティオリが現地に向かい、ウェイコ=マクレナン郡公衆衛生地区と共同で水のサンプルを採取して分析に出したわけだ。

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最終更新:10/17(水) 19:10
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