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大噴火の熱で脳が沸騰し、頭骨が爆発する、研究

10/19(金) 7:12配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

2千年前のベスビオ火山の噴火による死者の最期めぐって研究、反論も

 西暦79年に起きたベスビオ火山の大噴火により、周辺の古代ローマ帝国の都市とその住人は一夜にして消滅した。大量の火山灰がポンペイの町に降り注ぎ、建物はその重みで崩落した。その後激しい火砕流が山肌を駆け降りて町を焼き尽くし、さらに近くの港町ヘルクラネウムや近隣の町をも襲った。

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 2000年近く前の噴火がもたらした甚大な被害に疑問を呈する専門家はいないが、多くの犠牲者がどのようにして死んでいったかについては、意外にもまだ多くの論争がある。

 イタリアの専門家チームは、ヘルクラネウムでもとりわけ残酷な死を迎えた人々の遺骨を再調査し、その結果を2018年9月26日付けで学術誌「PLOS ONE」に発表した。遺跡からは、爆発したと思われる頭骨が見つかっているが、これまで爆発の原因は脳の髄液や軟組織が激しい高熱によって瞬時に沸騰したためと考えられてきた。そして、今回の論文でもそれを支持する証拠が提示されている。

 ところが、この仮説に反対する専門家もいる。ポーランドにあるワルシャワ大学の考古学者エルズビエタ・ヤスクルスカ氏は、論文の主張は「人間の体と骨に熱が与える損傷に関して私が知るあらゆる事実に反している」として反論する。

古代の楽園を襲った死

 灰、溶岩、有毒ガスから成る火砕流は、温度が摂氏700度に達し、時速80キロで押し寄せる。火砕サージは火砕流に似ているが、主な成分はガスだ。

 ベスビオ山の噴火では火砕流と火砕サージの両方が発生し、どちらに襲われたとしても、飛んできた岩に当たったり、大量の灰やガスを吸引して窒息したり、極度の高熱であっという間に体を焼かれるなど、恐ろしい死を迎えたと考えられる。

 論文の筆頭著者であるフェデリコ2世ナポリ大学病院のピエール・パオロ・ペトローネ氏は、西暦79年のベスビオ火山噴火による犠牲者の研究を数十年間続けている。過去に共同執筆者として関わった2001年の「Nature」や2010年「PLOS ONE」の関連論文では、多くの死を招いた主な要因は灰やガスではなく、高温の熱によるもので、犠牲者は苦痛を感じる間もなくほぼ即死状態だったことを示す証拠が提示された。これは、ほかの研究でも支持されている。

 同じ熱で死んだといっても、ポンペイとヘルクラネウムでは事情が少々異なっていた。火山から10キロほど離れていたポンペイには、まず噴火による砕屑物が降り注いで建物が崩れ、中にいた人々を押しつぶした。その後でとりわけガスを多く含んだ火砕サージが町を襲い、これが原因でほとんどの人が命を落とした。

 ポンペイで見つかった人骨は、多くが完全な状態で保存されていた。骨の損傷具合と様々な金属の溶け具合から、ペトローネ氏の研究チームは、多くの人が300度程度の火砕サージに襲われ、高温のサーマルショックにより即死したと考えた。

 ポンペイよりも火口に近いヘルクラネウムとその近郊のオプロンティスでは、被害はもっと深刻だった。ここで見つかった犠牲者たちの骨は熱によって破砕し、DNAは完全に破壊されていた。おまけに、頭骨は爆発したかのように砕けている。ペトローネ氏らは、ヘルクラネウムの方がより高温の500~600度もの火砕サージに襲われたため、脳の髄液も含め体内の液体が突然沸騰し、死に至ったのではないかと考えている。

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