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暴かれた「漫画村」、ブロッキングは本当に必要か?

10/19(金) 12:23配信

Wedge

 アニメや漫画などのコンテンツ産業にとって、出版社や作者に承諾なくコンテンツを公開し、広告収入などを得る、いわゆる海賊版サイトが大きな問題となっています。

 海賊版サイトの中には、「漫画村」(既に閉鎖)などのように、国内で出版されているコミックの主要タイトルのほぼ全てが無料で読めるようになっているサイトもあります。

 当然ながら、海賊版サイトのアクセス数がいくら増えても権利者には1円も還元されません。また、出版社や作者としては、本来であれば出版や配信によって得られたはずの利益が奪われているため、多大な被害が生じているといえます。

 このような海賊版サイトは実態を掴むのが難しく、既存の手続では差止や損害賠償が困難だとして、プロバイダ側でユーザのアクセスを遮断する、いわゆる「ブロッキング」を実施すべきという議論もされています。

 そんな中、先日、漫画家から委託を受けた弁護士の一人が、米国の訴訟手続を利用することにより、海賊版サイト(おそらく「漫画村」だと思われます)の運営者とみられる人物の氏名や住所などの情報を取得することに成功したことを発表しました。

 この弁護士はどのような方法でサイト運営者を特定したのでしょうか。また、これにより海賊版サイトに対するブロッキングの議論はどうなるのでしょうか。

運営実態の解明が困難であった「海賊版サイト」

 出版社や作者といった著作権者に無断で漫画などの著作物をインターネット上にアップロードし、利用者に閲覧させることは、著作権を侵害する行為です。

 このような違法アップロードに対しては著作権法に基づく刑事罰が科せられる可能性があります。また、出版社や作者は、違法アップロードによって不当に利益が奪われていることになりますので、著作物を違法アップロードした者に対して、本来得られたはずの利益を損害賠償請求することが考えられます。

 もっとも、損害賠償請求などを行うためには、まずは著作物を違法にアップロードした者(加害者)がどこの誰かなのかを突き止める必要があります。インターネットには匿名性がありますので、通常は容易ではありません。

 違法アップロードがSNSや掲示板などのウェブサービス上でなされている場合には、ウェブサービスの管理者やプロバイダに発信者情報を開示させることが可能です。この場合、多少手間はかかりますが、多くの場合、加害者の氏名や住所を突き止めることが可能です。

 これに対して加害者が独自に海賊版サイトを立ち上げ、管理・運営しているような場合には、ウェブサービスを介した情報開示はできません。

 この場合でも、ドメインの所有者情報や、IPアドレスからホスティングサービスを割り出すことで、ウェブサイトの運営者が誰なのかを突き止めることができる場合もあります。

 しかしながら、海賊版サイトの運営者は、通常は、ドメイン取得代行サービスなどにより所有者情報を匿名化しています。また、海外のホスティングサービスを利用している場合、日本の裁判手続により発信者情報の開示を求めることには困難があります。

 とりわけ悪質性の高い業者の場合、他の世界から孤立した法律の及ばない地域などに設置されたサーバによる匿名性の高いホスティングサービス(いわゆる「防弾ホスティング」)を利用して運営者がどこの誰なのかを巧妙に隠蔽しており、運営の実態を突き止めるのは困難でした。

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最終更新:10/19(金) 12:23
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