ここから本文です

本田圭佑「日本代表には呼ばれないし行くつもりがない」。東京五輪への熱きこだわりと克服すべき課題

10/24(水) 11:44配信

フットボールチャンネル

 本田圭佑のオーストラリアでの新たな挑戦が始まった。メルボルン・ビクトリーのキャプテンとしてAリーグ開幕戦に先発出場。現地で早くも絶対的な地位を確立しつつある。では、日本代表復帰の可能性は? 東京五輪代表への思いは? 現地で本田本人を直撃した。(取材・文:元川悦子【メルボルン】)

【動画】本田圭佑、実は試合に出ていた?仰天の真実が明かされる

●新たな挑戦はボランチとして

 本田圭佑が海外5ヶ国目の新天地、オーストラリア・Aリーグのメルボルン・ビクトリーで新たな一歩を踏み出してから4日。現地での彼に対する期待は高まる一方だ。

「いくつかのメディアは『本田の獲得はビジネス的側面が強いのではないか』という見方をしていたけど、それが誤りであることを彼自身が20日のメルボルン・シティ戦で示したんじゃないかな。あの試合では同時期に加入したスウェーデン代表FWオラ・トイヴォネンが怪我で欠場したこともあって、本田に合わせられる点取り屋がいなかったが、早ければ28日の次戦、パース・グローリー戦で復帰するかもしれない。彼との関係が確立されれば、本田はもっと大きな仕事をすると確信している」とアジアサッカーに精通するオーストラリア人のポール・ウイリアムス記者も太鼓判を押していた。

 こうして2020年東京五輪代表へのオーバーエイジ枠での参戦に向けて幸先のいいスタートを切った本田。だが、ご存知の通り、開幕戦では4-3-1-2の右インサイドハーフとも、4-4-2の右MFとも言える位置でプレーしており、純粋なボランチではなかった。

 森保一監督が採用するフォーメーションは最近のA代表での4-2-3-1、あるいはU-21日本代表がベースにしている3-4-2-1だ。いずれにしてもインサイドハーフを置く布陣ではない。となると、やはり本田はボランチとして自分に磨きをかけることが、大願成就のための早道となる。

 メルボルン・ビクトリーのケビン・マスカット監督は昨季までのキャプテンであるカール・ヴァレリと本田を中盤で組ませる考えもあると言われるだけに、今後の動向が気になるところ。ボランチとしてレベルアップすることの重要性を本田自身も強く認識しているはずだ。

 東京五輪に挑む現U-21日本代表のボランチ事情を見てみると、8月のアジア大会で主力だった渡辺皓太や松本泰志、神谷優太など小粒なタイプが多い。最終ラインで使っている板倉滉らを中盤で起用する方法もあるが、今のところ森保監督がそのアプローチを採る回数は少ない。

●森保監督はトルシエ時代の手法を踏襲?

 現在、AFC U-19選手権に参戦中の伊藤洋輝、郷家友太ら大型MF陣も東京五輪代表の候補者と言えるが、まだまだ成長途上で2年後にそのレベルに達している保証はない。2列目のアタッカー陣に比べて、ボランチが人材的に手薄なのは事実だけに、指揮官がそのポジションにオーバーエイジ枠を使うことは大いに考えられる。

 そこで浮上するのが、現A代表の面々だ。2000年シドニー五輪のU-23日本代表と2年後の日韓ワールドカップのA代表を兼務したフィリップ・トルシエ監督も両チームをにらみながらチームを固めていった。

 シドニー五輪でオーバーエイジ枠に入った楢崎正剛、森岡隆三、三浦淳宏も当時のA代表の中核選手。過去の代表の歴史を大事にする森保監督もこの時と同様の進め方をするだろう。

 となれば、現段階での東京五輪代表のオーバーエイジ候補は青山敏弘、柴崎岳、遠藤航の3人ということになる。とりわけ、サンフレッチェ広島時代からの秘蔵っ子で、森保サッカーの伝道師である青山の重要度は高い。10月シリーズで新キャプテンに就任した吉田麻也もアドバイスを求めていたほど。指揮官との強固な信頼関係は揺るぎないものがある。

 そこに割って入ろうとする選手は、たとえ本田であろうともハードルを越えるのは容易ではない。ただ、現段階で32歳の青山をA代表に呼んでいるというのは、森保監督があまり年齢にこだわっていない証拠。そこは1つの追い風と言える。

 欧州組の柴崎、遠藤の2人も指揮官にとっていてほしい人材だ。森保監督は柴崎がロシアワールドカップで輝きを放ったのをコーチとして間近で見ていた。自身もかつてボランチだったがゆえに、その存在価値の大きさを再認識したはずだ。欧州でコンスタントに活躍していれば、招集に問題はない。

 一方の遠藤は2016年リオデジャネイロ五輪にキャプテンとして出た経験値が大きい。今季から赴いたベルギーでボランチとして自信を深めているのもプラス要素。東京五輪世代の守備の要・冨安健洋と同じクラブで日常的にプレーしている点も、連携を考えると利点が多い。森保監督が守備的なボランチを求めるとしたら、現時点でファーストチョイスになり得るのは急成長中のこの男だろう。

●「A代表に入らなくても、五輪代表には行けるでしょ」

 本田がそんなライバルたちに打ち勝って狭き門を突破しようと思うなら、どこかのタイミングでA代表に復帰する必要があるのではないか。東京五輪までの2年間、A代表に一度も来ない選手をいきなりオーバーエイジ枠で起用するほど、森保監督は大胆なタイプではない。トルシエ方式で融合や継続性を重視していくと見られる。

 しかし、本田を23日にメルボルンで直撃すると「A代表に戻る気持ち? 行くつもりはないですね」と断言した。「呼ばれたらどうするのか?」という問いにも「呼ばれないと思います。行くつもりがないんで」と一蹴。森保監督が2つのチームを兼務していることを分かったうえで、「A代表に入らなくても、五輪代表には行けるでしょ」とキッパリ言い切ったのだ。

 確かにA代表と五輪代表監督が別だった2012年のロンドン五輪や2016年のリオデジャネイロ五輪は、本大会直前に関塚隆監督や手倉森誠監督がオーバーエイジ選手を急きょ招集する形を取ったが、今回は状況が違う。それだけ一発逆転は難しい。その現実を理解したうえで、本田は東京五輪だけを見据えている。そんな潔さを感じさせた。

 今、彼はカンボジア代表の事実上の監督を務めていて、そういう立場の人間が再び日の丸を背負っていいのかどうかという疑問も残る。「コンプライアンス上の問題があるのではないか」と見る向きもあるため、そこは日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長と話し合いを重ねていくべきテーマだ。

●Aリーグは練習が軽い? 本田が克服すべき課題とは

 ただ、カンボジアとの契約は2年で、ちょうど東京五輪の時期には満了を迎える。本人はJFAとの事情を勘案してそういう契約にしているのかもしれない。だとしたら、東京五輪出場への本気度がうかがえるところだ。

 2年後の夢を現実にするためのもう1つのハードルは、Aリーグでトップフォームを維持できるかという点だ。メルボルン・ビクトリーのシーズン開幕直後の1週間を見ると、ダービー翌日の21日がオフ、22日は午前中に1時間の軽いフィジカル調整で、23日から27日が戦術的要素の強いトレーニング、28日が次戦、パース・グローリー戦という流れになっているという。

 こうした動きを踏まえ、一部の現地関係者は「Aリーグは練習が軽すぎてパフォーマンスの低下が避けられない」と指摘する。かつて三浦知良がシドニーFCでプレーしていた2005年に、同クラブの指揮を執ったピエール・リトバルスキー監督がドイツ流の2部練習を毎週前半に取り入れたところ、オーストラリア人選手からAリーグにクレームが入ったという。

 その時代と現地選手・監督の意識があまり変わっていないとしたら、本田は周りを引き上げない限り、自分自身の状態が下降線を辿ることになりかねない。こうしたネガティブなシナリオを回避し、周りの意識を改善し、より高みを目指せる環境に変えていくことも、彼に託された命題だ。

 東京五輪出場への道は長く険しいが、絶大なカリスマ性と影響力を持つ彼がいるメリットは森保監督も分かっているはず。そこを評価させるべく、本田の地道な努力は続く。

(取材・文:元川悦子【メルボルン】)

フットボールチャンネル

記事提供社からのご案内(外部サイト)

あなたにおすすめの記事