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ドイツ鉄道がトラブル時に乗客をまるで「ゴミ扱い」にした理由

10/26(金) 9:00配信

現代ビジネス

2015年のトラウマが蘇る

 9月末、ドイツ鉄道の今年の1月からの総決算が発表された。それによれば、遅延は3割以上(ただし、5分59秒までの遅れは定刻とみなされている)。ICEでのトイレの故障が1日で52件、空調の故障が1日で38件。さらに付け加えるなら、日本の新幹線とドイツのICEの清潔さは、雲泥の差である。

 私がドイツに渡ったその昔、ドイツ鉄道もドイツ郵便も、「正確」を絵に描いたような手堅い組織だった。現在のクオリティーの崩壊は、すべてとは言わないまでも、民営化に依るところが大きいのではないか。鉄道のような公共性の高いものを市場競争に任せると、経費の切り詰め競争となり、長年の間に様々な不都合が蓄積する。

 日本の鉄道が民営化したあとも秩序とクオリティーを保っているのは、日本人の責任感によるのだろうが、世界の常識から言えば、「奇跡」のようなことだ。ただ、その責任感のおかげで過疎地の路線には負担がかかりすぎており、かえって心配でもある。

 10月11日のニュースによれば、ドイツ鉄道の労組は、劣等生並みの成績だったにもかかわらず、賃上げ、時短、待遇改善の79項目もの要求をあげて、労使交渉を開始した。思い返せば2015年、ドイツ鉄道は1年に10回ものストを打ち、国中を大混乱に陥れた(1週間連続ストもあった)。

 そのとき労組が勝ち取った内容の一つが、従業員が待遇改善の内容を、①賃上げ、②週の労働の1時間短縮、③1年間の休暇の6日間延長、という3つの中から選べるようになったことだ。しかし、その結果、6割の従業員が「休暇の6日間延長」を選んだため、たちまちルーティーンが回せなくなり、ドイツ鉄道はこの3年間で1500人もの新規採用を強いられた。

 いずれにしても、当時のストのトラウマがまだ国民の頭から抜け切れていない今、労組はふたたび、クリスマス前のストという脅しにかかっている。1月からの運賃の値上げも決まっている。

 国民の、ドイツ鉄道に対する不満は大きい。今、クオリティー低下の問題があちこちのメディアで報じられているのは、この国民感情と大いに関係しているのだと思う。

川口 マーン 惠美

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最終更新:10/26(金) 9:00
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