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狙われるオナガサイチョウの「赤い象牙」

10/30(火) 10:01配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

密猟者と生息地の消失が奇妙なくちばしをもつこの鳥を追い詰める

 東南アジアの森林が存続するうえで、オナガサイチョウの存在は欠かせない。食べた木の実を吐き出したり、排泄したりすることで、森の再生を助けているのだ。原生林の伐採が進むなか、この役割はとりわけ重要だ。森林伐採の拡大により、アジアに生息するサイチョウは生息地が減少し、思うように巣作りができなくなっている。

ギャラリー:密猟者に狙われるオナガサイチョウ

 オナガサイチョウは、洞のある大きな樹木にしか巣を作らないが、こうした木は大抵、森のなかでも古い大木で、伐採業者の格好の標的になる。また、この鳥は繁殖に時間がかかり、交尾は1年に1度で1羽のひなしか育てない。母鳥とひなは約5カ月間、巣穴にこもって暮らすため、食べ物の確保は雄頼りだが、その雄がカスク(くちばしの上の硬い突起)目当ての密猟者などによって殺されれば、残された雌とひなはおそらく死んでしまうだろう。

 象牙よりも加工がしやすいオナガサイチョウのカスクは、「赤い象牙」とも呼ばれ、装身具や彫刻作品の素材としてアジアでの需要が高い。中国の富裕層の間では、財力や権力、富の象徴として珍重されることもあるという。

 国際的な自然保護団体「野生生物保護協会」のインドネシア事務所で、野生動物に対する犯罪の取り締まりを統括するドゥイ・アドヒアストによれば、オナガサイチョウの密猟者のなかには、犯罪組織の支援を受けている者もいるという。提供された銃や道具を使って獲物を狩り、組織のネットワークに横流しするのだ。

末端価格が象牙を上回ることも

 ドゥイは、こうした犯罪ネットワークは、トラやセンザンコウなど、密売品の販路が確立された動物を主な標的にすると言う。だが、そこにオナガサイチョウも含めることで、売り上げが増加することに、彼らはすでに気づいている。

 「トラの牙とセンザンコウ、そしてオナガサイチョウ。中国人によるアジア全域を対象とした闇取引ネットワークには、この3つが流通しています」とドゥイは語る。

 こうした犯罪組織の多くは中国人の大物が束ねていて、足がつかないように密輸方法や金の流れを取り仕切っている。闇取引のネットワークには、密猟者、仲買人、商品を国外へ持ち出す密売業者、そして、中国国内で流通させる人物がいる。持ち主が変わるたびにカスクの値段はつり上がり、英国のNPO「環境調査エージェンシー」によると、1グラム当たりの末端価格が、象牙よりも高くなることもあるという。

 取り締まり機関や司法制度は麻薬の密売や人身売買といった組織犯罪には厳しく対処するが、野生動物の密輸に関してはそれほど真剣に扱っていないことを、彼らは知っているのだ。

※ナショナル ジオグラフィック11月号「オナガサイチョウの受難」では、奇妙なくちばしを密猟者に狙われ、生息地も減少するオナガサイチョウの窮状についてレポートします。

レイチェル・ベイル/英語版編集部

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