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日本人の平均身長低下と女性の痩せ指向との相関関係

11/1(木) 5:00配信

日経ウーマンオンライン(日経ウーマン)

 若い女性が痩せていることへの社会の関心が薄く、対策が後回しになっている日本。権威ある米国科学誌「Science(サイエンス)」では、日本の女性に痩せ指向が強いことによる日本人の未来を危惧する記事が掲載されました。その記事で研究結果が紹介されていた国立成育医療研究センター社会医学研究部ライフコース疫学研究室長の森崎菜穂さんに、記事に対する反響や妊婦の体重と赤ちゃんの健康との関係について聞きました。

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 「痩せている日本人妊婦が未来に与える影響は大きい――」。2018年8月、世界的権威のある米国科学誌「Science(サイエンス)」に、こんなショッキングな見出しが躍りました。

 日本人の平均身長が縮んでいることと、小さく生まれる赤ちゃん(出生体重2500g未満)が日本で増えていることには相関があり、世界的に見て、日本の女性に痩せ指向が強いことが、わが国の将来に与える影響について報じる内容でした。

 若い女性が痩せていることへの関心が薄く、対策が後回しになっている日本ですが、この記事では、国立成育医療研究センター社会医学研究部ライフコース疫学研究室長の森崎菜穂さんらの研究「低出生体重児出生率と平均身長との関係」の結果を紹介し、妊婦の痩せが引き起こす問題を危惧しています。

◆森崎菜穂さん
国立成育医療研究センター社会医学研究部ライフコース疫学研究室長。
2007年東京大学医学部卒業。12年ハーバード公衆衛生大学院公衆衛生学修士号取得。医学博士。東京大学医学部附属病院、東京都立墨東病院、東京都立小児総合医療センターにて小児科・新生児科医師として勤務後、14年より現職。3歳児の母でもある。

――「サイエンス」の記事には、健康上のリスクがある低出生体重児(出生体重2500g未満)の増加とともに、日本人の平均身長が縮んでいる――というサブタイトルがありました。日本人の平均身長が低くなっているという事実自体、驚きました。まずは、サイエンス誌の記事の反響を教えてください。

森崎さん 日本人の平均身長が低下傾向にあるという研究については、論文を発表した後にいくつかのメディアで取り上げられました。でも、サイエンス誌の記事で取り上げられた「痩せた妊婦さんが多いことから起こる心配事」に対する反響は特にありません。日本では、低出生体重児や、痩せた妊婦さんの問題に対する関心がまだ低いのかもしれません。

 一方で、サイエンス誌の指摘にもあるように、日本の妊婦が痩せている要因の一つに、産婦人科の先生たちが、妊娠高血圧などの予防のために、妊婦さんの体重を増やし過ぎないようにと行ってきた体重指導の影響もあります。しかし、妊婦の体重制限が妊娠中の合併症の予防に与える効果が、長年信じられていたほどは高くないかもしれないことや、妊娠中の体重増加が足りないことのマイナス面も明らかになってきた今、体重増加制限については少し緩やかに考えるくらいがいいかもしれないと産婦人科の先生方も考え直しているようです。

●身長が低いと心筋梗塞や早産のリスクが上がる

――日本人の平均身長は本当に縮んでいるのですか。

森崎さん はい。実はこの40年間、成人の平均身長は縮み続けています。日本人成人の平均身長は戦後伸び続け、1978~79年生まれでは男性171.5cm、女性158.5cmでした。ところが、ここをピークに1980年生まれの人からは低下してきています。2014年に生まれた子どもが成人になったときの平均身長は、1978~79年生まれの人より男性で1.5cm、女性で0.6cm低くなると予測されるのです。

 1980年は、日本で出生体重2500g未満の赤ちゃん、すなわち低出生体重児が増え始めた年です。1970年代後半に5.1%だった低出生体重児の割合は、80年5.2%、2007年には9.7%(男児8.5%、女児10.6%)と2倍近くに増え、そのままほぼ横ばいで高止まりしています。

 身長の約8割は遺伝によって決まりますが、残りの約2割は栄養状態や健康状態など幼少時の生活環境に影響を受けます。早産や胎児発育不良で低出生体重児として生まれた子は、成人になったときの身長が低くなりやすいことが国内外の研究で示されています。日本人の平均身長が低下しているのは、低出生体重児が増加したことが影響していると考えられるのです。

 幼少期の栄養状態や健康状態により身長が伸び悩むと、成人後の健康にも影響を与えかねません。身長が低いと、高血圧、心筋梗塞や脳梗塞を発症するリスクが一般よりも高いです。お母さんが低身長の場合、早産や妊娠中の合併症が増えやすいということも国内外の複数の研究から分かっています。そして、そのようなお母さんで妊娠中の合併症が起きた場合、赤ちゃんがおなかの中で十分育たず、また低出生体重児になってしまうという悪循環に陥りかねません。

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