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極右を大統領に選んだブラジルの行方

11/2(金) 12:21配信

Wedge

 10月28日に行われたブラジル大統領選挙の決選投票で、極右ジャイール・ボルソナロ氏(社会自由党、PSL、55.13%)が労働党(PT)のフェルナンド・アダジ氏(44.87%)を破り当選を果たした。既成政治に怒った国民が、ついに型破りともいえる極右候補ボルソナロ氏に政権を託した。「ブラジルのトランプ」「ブラジルのドゥテルテ」が南米最大の国の実権を握った。

 しかしブラジルは、ボルソナロ氏の登場で安定していくのだろうか。一時の熱狂に揺れたブラジル国民が、その騒ぎから醒め我に返った時、自らの国が思いもよらぬ者に支配されていることを知り愕然とすることはないのか。

アウトローゆえに「清新」

 ボルソナロ氏の勝因については前稿で指摘のとおり、「既成政党に対する国民の信頼喪失」にその本質があったことは疑いない。ディルマ・ルセフ元大統領による経済失政により、2014年から2016年までのブラジル経済は7パーセンテージ・ポイント成長率が下押しされた。多くの国民は失業の憂き目にあい、またせっかく蓄えた資産を失ってしまった。

 加えて、2014年に発覚し、現在なお捜査継続中のペトロブラス汚職事件はブラジル史上最大の疑獄事件となり、PTをはじめとするほとんどの既成政党がそれに関与していることが明らかになった。治安の悪化や政府が提供するサービスの低下もあり、もともと政治というものに多くを期待しなかったブラジル国民も、今度ばかりは既成政党に対する信頼を失った。「これまでの政党ではだめだ」というのがブラジル国民のコンセンサスになったといっていい。その「政治的真空」の中に現れたのがボルソナロ氏だ。

 ボルソナロ氏は当初、泡沫候補でしかなかった。軍司令官を歴任後、28年も議員職にありながら目立った業績は皆無。その過激な言動で名前が知られていたに過ぎない。従って当初は、ボルソナロ氏の当選を予想する者はいなかったといっていい。しかし、この真空状態の中、ボルソナロ氏は既成政治の外の「アウトロー的存在」であり、その意味で、穢れた今の政界にあって「清新」である。既存政治に対する信頼を失った国民にとり、新しい指導者は何はさておき、今までの政治とは別の世界の人物でなければならなかったのだ。

 確かに、黒人、ゲイ、女性を差別する同氏の言動は、これら社会的弱者にとり支持をためらうものであったことは事実である。しかし、これらの人々も、PTの失政で資産を失い、汚職で既成政党に対する信頼を喪失している。ボルソナロ氏の過激な言動は逆に、同氏の立ち位置を明確にし、「既成政治との決別」を強く印象付けるのに役立った。銃所持の自由化や、「警察は犯罪者を殺せ」との発言は、治安悪化に悩む人々にとり実効性ある政策として受け入れられていったのである。

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最終更新:11/2(金) 12:21
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