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ケツメイシはファンと共に年を重ねるグループに 『ケツノポリス11』から考える“長生き”の秘訣

11/4(日) 19:39配信

リアルサウンド

参考:週間アルバムランキング2018年11月5日付(2018年10月22日~2018年10月28日)

 3週連続首位だったMr.Children『重力と呼吸』が5位へ。それでも初週31万枚→次週5.9万枚→先週2.1万枚→今週が1.2万枚なので、発売から1カ月で40万枚を突破したことになります。相変わらず、すごい。チャートの世界に昇り詰めてそろそろ四半世紀。全国民が歌えるヒット曲を星の数ほど生み出してきた彼らが、デビューから26年経った2018年になってもイキイキと自分たちのサウンドを鳴らしていること。そんな姿がきちんと40万人に届いている事実。どちらも素晴らしい限りです。

 さて、今週の主役は、4万枚のセールスで初登場1位を奪取したケツメイシ『ケツノポリス11』。メジャーデビューは2001年ですが、母体となるグループの活動開始は1993年。彼らもまた四半世紀ケツメイシであり続け、活動休止も方向転換もないままマイペースに作品を出し、常に楽しげな自分たちのイメージを更新しているグループです。これはヒップホップ開眼以降のJ-POPで前例のない記録と言えるのではないでしょうか。

 いやいや、もっと長くやっているのはスチャダラパーだ、RHYMESTERだ、という声が聞こえてきそうですが、彼らはあくまでヒップホップマナーに則ったラップグループ。J-POPとしての親しみやすさ、聴きやすいメロディを重視し、サビ以外のパートをラップで構成する楽曲が広まっていくのは2000年以降のことです。これを“ヒップホップ開眼以降の”J-POPと定義しましょう。華々しい主役はRIP SLYMEやKICK THE CAN CREWでしたが、次のブレイク候補、スマッシュヒットはあるけどまだ本命じゃない……という位置にいたのがデビュー当時のケツメイシでした。その後、満を持して「夏の思い出」や「さくら」などが生まれていきますが、ここはもう説明不要ですね。

 歌謡曲の郷愁を感じるメロディ、レゲエやディスコなどの要素も含んでいるケツメイシの音楽が、さて純然たるヒップホップグループかといえば、もちろん違います。そこは本人たちも自覚していて、初期の頃から〈俺は美少年(ビーボーイ)じゃなくてビールボーイ〉とエクスキューズを入れるようなお祭りソングが多数ありました。本気のB-BOY論争をやりたいのではなく、ただ仲間との楽しい日々をそのまま歌いたい。この姿勢こそがケツメイシの長生きの秘訣になったと思うのです。

 ジャンルに則ったマナーではなく、“日々をそのまま”が主題であるのだから、彼らは加齢だって隠さない。「さくら」の大ヒットが2005年ですが、同年のアルバム『ケツノポリス4』には、もう中年だ、体臭もあるぞと自らオッサン宣言をする「三十路ボンバイエ」なんて曲がありました。そして、メンバー全員が40代になった今回のアルバムでは、上司と部下の板挟みになる仕事の辛さ、予想とは違っている現在地、子供とはしゃぐ週末バーベキュー、あとは地元の仲間と乾杯する宴会ソングなどが生まれていく。筆者は同世代なのでよくわかりますが、同時にこれは、刺激やスリルを求めるヤング世代にそこまで色目を使っていないということ。彼らの音楽は相変わらず自分たちの日々そのままで、“ケツメイシと共に年をとっていくアラフォーのキミ”に向けられているのですね。こんなふうにファンと共に年を取っていくラップグループのあり方、20年前には想像もできませんでした。

 繰り返しますが、これがヒップホップだと言う気はまったくありません。でもヒップホップ開眼以降のJ-POPで最も長生きしている人気グループはケツメイシです。奇しくも先日にはRIP SLYMEの活動休止が発表されたばかり。ちょっとユルいけど憎めない彼らのストーリーはどこまで続くのか。毎回同じタイトルが冠され、『KETSUNOPOLIS 8』、『KETSUNOPOLIS 9』以外は同じ場所で撮影されたメンバーの記念写真がジャケットになっている『ケツノポリス』シリーズ。なるほど、ここまで続いてみれば、これは立派なファミリーポートレイトだと納得できます。

石井恵梨子

最終更新:11/4(日) 19:39
リアルサウンド

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