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トラックがやけに車間を詰めてくるのは理由があった。元トラック運転手が解説

11/4(日) 8:40配信

HARBOR BUSINESS Online

 「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。

⇒【画像】アメリカではメジャーなボンネット型のトラック(NY・昨年冬撮影)

 前回は、「一般車の割り込みでトラックが晒される危険」について説明したが、今回からは、トラックが「マナー違反だ」と言われる行為について、その理由や事情を数回に分けて説明していきたい。

 トラックドライバーの実態について言及すると、毎度聞こえてくるのが「彼らはマナーが悪い」という一般ドライバーらからの声だ。

 確かに、マナーの悪い悪質なトラックドライバーも多く存在する。同業同士で腹を立て合うことも日々あるし、かくいう筆者も、今までに何度彼らに吠えたか知れない。

 が、こうした悪質な運転をするドライバーのほとんどは、「トラックドライバーだから悪質な運転をする」という訳ではない。トラックを降り、乗用車に乗り換えた仕事終わりの帰り道でも、彼らは大概行儀の悪い走り方をするものだ。

 一方、こうした悪質なドライバーのケースとは別に、トラックの世界には、ドライバーが無意識に起こしてしまうマナー違反や、マナー違反だと知っていてもどうすることもできない日本社会全体の構図が存在するのも、また事実である。

 中でも、特に彼らが指摘されるマナー違反が、「車間の狭さ」だ。

 前々回の「トラックがノロノロ運転をする理由」でも述べたように、一般道を走行している時や渋滞中は、車間を大きく空けて走っているトラックだが、一転、信号待ちなどで完全停止している時には、車間を極端に詰め、一般ドライバーを無意識のうちに怖がらせてしまうことがある。

 こうした現象を起こす原因になるのが、トラックにある2つの特性、「車高の高さ」と「キャブオーバー型の車体」である。

 乗用車の場合、アイポイント(ドライバーの目の高さ位置)はミニバンでも地上から約1.3~1.4m。それに対し、車高の高い大型トラックの場合は、軽く2mを超える。

 さらに、現代、日本を走るほぼ全てのトラックは、見ての通りボンネットがない「キャブオーバー型」というタイプのもので、運転席の前に視界を遮る車体パーツがない。

 ちなみに、アメリカの広大な大地を走る長距離トラックは、ボンネットが付いている、その名も「ボンネット型」なるタイプが主流なのだが、国土も道幅も狭い日本を走るには、できるだけ車体は短い方がよく、空気抵抗を深く気にするほど「超長距離」を走る訳でもないため、キャブオーバー型が最適なのだ。

 これら2つの要素を兼ね備えている日本のトラックは、乗用車に比べて視界が大変広く、前の乗用車を「見下ろす」格好になる。すると、ボンネットが付いている車高の低い乗用車からよりも、前のクルマと自分のクルマの間に見える「地面の面積」も広くなり、「十分な車間を取っている」という錯覚を起こすのだ。

◆一方、一般車ドライバーにも目の錯覚はある

 大概のプロトラックドライバーは、もちろんこうした現象を知っている。しかし、シフトレバーを握ってまだ間もない「初心者トラックドライバー」の場合、こうした現象に気付かなかったり、適切な車間がどれほどなのか、感覚が掴めていなかったりすることがあるのだ。

 一方、一般ドライバーにも起きる「目の錯覚」がある。

 既述通り、日本を走るほとんどのトラックには、ボンネットがない。そのため、前方の乗用車のルームミラーから後ろに止まっているトラックを見ると、その一面が「トラックの壁」となり、乗用車が止まっている時よりも車間が狭く感じたり、圧迫感を覚えたりすることがある。

 特に、昨今巷で流行している「ミニバン」や「軽自動車」などの後方は、「セダン」のようにトランク部分が突き出ていないため、なおさら自分のクルマにトラックがくっついているように見えるのだ。

 車体が大きく扱いが難しいトラックには、乗用車以上に安全運転に務める責任と、より高度な運転知識や技術を習得する義務がある。既述の通り、中には故意的に車間を詰め、大型車に乗ったことでなぜか気を大きくする悪質なトラックドライバーも存在する。

 が、ほとんどのトラックドライバーは、これらの責任や義務を守り、真面目にひたすら日本の経済を運ぶ職人たちだ。

 同じ道を走る仲。「トラックドライバー=マナーが悪い」と決め付けず、道路の安全環境構築のためにも、彼らが置かれている状況や見えている視界の違いを、まずは少しでも理解しようとしてほしいと願う。

【橋本愛喜】

フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。

ハーバー・ビジネス・オンライン

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