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【卓球】またも化けた伊藤美誠。中国の研究を振り切る進化のスピード

11/5(月) 0:32配信

卓球王国

世界ランキング1位が戦意を喪失。伊藤が見せた圧巻のプレー

 11月4日に最終日を迎えたITTFワールドツアー・スウェーデンオープンの女子シングルスで、伊藤美誠(スターツSC)が優勝した。準々決勝で世界ランキング6位の劉詩ウェン、準決勝で世界ランキング2位の丁寧、そして決勝で世界ランキング1位の朱雨玲と、中国のトップ選手を連破しての戴冠だった。

 圧巻は決勝の朱雨玲戦。今まで多くの日本選手が屈してきた、朱雨玲の鉄壁のバックハンドに対し、バック対バックの打ち合いで完全に優位に立った。回転量の多いバックドライブから、時にサイドを厳しく突き、時にミドルを襲う鋭いバック強打を連発。そしてフォアハンドの強烈なスマッシュを機関銃のごとく打ち続けた。朱雨玲は何の打開策も講じることができないまま、中盤からはイージーミスを重ね、戦意を喪失したようなプレー内容だった。

フォアストレートとナックル。ふたつの進化が快進撃を支えた

 今大会の伊藤が、中国選手の精緻なプレーを狂わせた理由として、ふたつのプレーが挙げられる。ひとつはフォアハンドでストレートに打つ「フォアストレート」の進化、そしてもうひとつはバックハンドで無回転の「ナックル」を巧みに使ったことだ。

 まず、フォアストレート。伊藤といえば、フォアハンドでのミート打法「みまパンチ」が有名で、これもフォアストレートに打つことが多いが、小さく合わせ打つブロックに近い打法だった。しかし、今大会では肩を引いてうまくスイングのスペースを作り、より威力あるスマッシュでフォアストレートを攻めることができていた。これまで伊藤のスマッシュを何本でも返していた丁寧も、このフォアストレートへのスマッシュが加わったことで待ちが絞りにくくなり、次々に打ち抜かれた。ボクシングで言えば「ジャブ」くらいの威力だったのが、KOも狙える「ストレート」に進化したくらいのインパクトがあった。

 加えて、バックハンドから繰り出す無回転に近いボール、「ナックル」が大きな効果を発揮した。伊藤がラケットのバック面に貼る、表ソフトラバーという粒が表面に出ているタイプのラバーは、主流である裏ソフトラバーに比べて回転はかけにくいが、ナックルが出しやすい利点がある。同じバック表ソフトの選手では、先輩の福原愛がナックルを実にうまく使う選手だったが、今大会の伊藤のナックルも見事だった。ラケットを車のワイパーのように、左から右へ横にスライドさせ、相手のドライブの回転を殺す。同じナックルでも、微妙に下回転が加わったり、純粋に無回転に近いボールになるのがナックルの嫌らしいところだ。

 近年、中国女子は卓球の「男性化」を標榜し、フォア・バックの両方から強力なドライブを繰り出すパワーヒッターを育成してきたが、伊藤はさながら弁慶を手玉に取る牛若丸。巧みな球質の変化でヒラリ、ヒラリとパワーボールをかわし、鋭い一撃を突き刺した。

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最終更新:11/5(月) 9:46
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