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日韓「友好幻想」の終焉

11/5(月) 12:00配信

日経ビジネスオンライン

 在日韓国人の友人は、次のことを父親にきつく口止めされていた。「太平洋戦争の時、八幡製鉄(現新日鉄住金)で働いた。日本が敗戦し帰国する際は退職金が出た。送別会で餞別ももらった。強制労働はなかった。日本人には話すな」。父親は、「募集」か「官斡旋」で八幡製鉄に来た。帰国したが職がなく、密航して再び日本に来た。

【関連画像】日韓基本条約は「日米韓の軍事同盟だ」との強い批判を日本国内でも受けつつ批准された(写真:AP/アフロ)

 韓国の大法院(最高裁)は10月30日、韓国人の元工員に対し、1人当たり1億ウォン(約980万円)を支払うよう新日鉄住金に命じた。判決は「原告は未払い賃金や補償金を求めているのではない」と述べ、「慰謝料請求権」を認めた。

 これは、奇妙な判決だ。メディアは「徴用工訴訟」と報じたが、原告は「徴用工」ではなかった。判決は「強制動員の被害者」と述べた。「徴用工」とは、1945年以降「徴用令」に基づいて来日した朝鮮人だ。原告はそれ以前の「募集」か「官斡旋」に応じて新日鉄住金で働いた人たちだ。

 さらに奇妙なのは、判決は「損害賠償」ではなく、「慰謝料の支払い」を命じた。慰謝料とは、一般的に精神的苦痛に対する支払いとされる。

 つまり、原告は「未払い賃金」と「補償金」が訴因では、勝訴できないと考え「慰謝料」を請求した。これを韓国最高裁は認めた。なかなか巧妙な訴訟戦術だ。慰謝料なら、その後の精神的苦痛や差別、病気などを理由に請求できる。賃金の支払いや補償金と違い、慰謝料なら労働の実態などの事実関係が争点になりにくい。

●最高裁判事の過半を文大統領が任命

 この判決に対し、韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相は「司法府の判断を尊重する」と述べた。「司法の独立」と、なぜ言わなかったのか。韓国のメディアも「司法の独立」とは報じなかった。韓国語で「司法の独立」を言うと、多くの韓国人は白けるか、鼻で笑う。司法が独立していると、決して思っていないからだ。筆者もソウル特派員時代に、大統領府に判決内容を相談に来た裁判所長を目撃した。

 韓国では、長い間「司法は権力の僕(しもべ)」と揶揄された。それでも今回の判決に、韓国民の多数が「胸がスッキリした」思いを抱いているのは事実だろう。国民は「強制労働」「不法な植民地支配」「反人道的な不法行為」の認定に、満足する。判決に権力(行政)の意向が反映されたと、一般庶民は思うだろう。

 司法が独立していないと断じる根拠は、最高裁長官の経歴だ。金命洙長官の前職は、春川地方裁判所長であった。地方の裁判所長が、最高裁長官に抜擢された。ありえない人事だ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、同じ考えの裁判官を抜擢したと考えるのが、常識だろう。加えて、最高裁判事13人のうち7人が文大統領に任命された。

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