ここから本文です

イノベーションは「多様性」と「休息」から生まれる――『世界を読み解く「宗教」入門』著者インタビュー(後編)

11/6(火) 7:01配信

Book Bang

『ビジネス教養として知っておきたい 世界を読み解く「宗教」入門』の著者、同志社大学神学部の小原克博教授インタビュー。後編では、「トランプ大統領とアメリカ社会」から「日本人の労働観」まで、広範なテーマについて宗教を軸に語っていただきました。

トランプ大統領とアメリカ社会の論理

(前編から続く)

──宗教への偏見やバイアスは、「知る」ことによって克服できる、というお話でした。

ところで、知らないというか、よく理解できないことに、「トランプのアメリカ」があります。トランプ氏の支持層として「キリスト教右派」というワードが頻繁にメディアに登場しますが、両者はなぜ強く結びつくのでしょうか。また、極端に世俗的であり宗教的でもあるアメリカという国を、どう理解したらいいのでしょうか。

トランプ大統領を支えているのは、おおざっぱにいうと宗教右派であり道徳的な保守層です。両者はやはり保守的な宗教的価値観によって結びついています。

大統領選挙のときに必ず問われるのは、よく知られているように、妊娠中絶の問題、同性愛・同姓婚の問題をどうするかということです。たいていの場合、民主党と共和党の候補者では態度が異なります。前回の大統領選では、民主党のヒラリー・クリントン氏は「中絶は女性の権利」「性的な多様性を認める」という立場でしたが、これを支持する人たちも半分くらいいるわけです。

ところが反対に、こうした考え方は「アメリカの伝統的な価値観を崩壊させる」「もう一度、伝統的な価値観を取り戻さなくてはいけない」という人たちがトランプ氏を支持しました。中絶には反対、結婚は異性間でするものであって同性婚などけしからん、と考える人たちです。

こうした状況は毎年のように調査されています。それによると、中絶、同性婚を支持する人たちは徐々に増えてきています。しかし保守派も負けてはいません。なんとか巻き返そうとしていて、両者はしのぎを削っています。

トランプ氏自身は、敬虔なクリスチャンであるとは簡単にはいえません。大統領選挙の前も、クリスチャンの間で大激論がありました。「こんな女性蔑視的な人物を支持していいのか」ということで、一時分裂しかけました。でも、アメリカの伝統的な価値観を守るためには、トランプに投票しヒラリーを落とすしかないと、やむを得ず大同団結したということです。大統領選の結果は大方の予想を裏切るものでしたが、それくらい見えない形で、宗教的な保守層がまだまだ強固に存在しているということなんですね。

また、「トランプ氏のような経済的成功者は神に祝福されている」という考え方によって支持されている側面もあります。

──どういうことでしょうか。

アメリカのキリスト教社会の特徴的な考え方に、経済的成功と信仰を結びつける論理があります。簡単にいうと、「もし自分が、死後天国に行けるような人間なら、生涯にわたって神が祝福してくれるわけだから、経済的に恵まれた生涯をおくるはずだ」という考え方です。すなわち、「経済的に成功している人は、神に愛され、祝福された存在だ」ということ。成功するということがいわば至上の価値になっているわけです。

──なるほど。アメリカはやはり、2つに分断されているのでしょうか。

アメリカのリベラルと保守は、必ずしも固定されているわけではありません。たしかに両極は存在していて、アメリカ社会をほとんど分断しているともいえます。ただし、真二つに分かれているわけではなくて、様々なレベルの中間層がたくさんいるんです。どっちにでも動くような。そこにアメリカの多様性があって、常に変化の可能性がある。

先日、ミュージシャンのテイラー・スウィフトが「私は民主党に投票します」と宣言しただけで、あっというまに30万人が有権者登録をしたのがその証拠です。セレブリティのひと言で、いままで無関心だった人が特定の政治的な行動をはじめる。アメリカ社会の多様性があらわれた現象といえるでしょう。

──多様性(ダイバーシティ)が、アメリカの活力の源なのかもしれませんね。

1/3ページ

最終更新:11/6(火) 7:01
Book Bang

記事提供社からのご案内(外部サイト)

あなたにおすすめの記事