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キューバがロシアと再接近。かつての旧ソ連レベルとの関係が復活の可能性も

11/7(水) 15:40配信

HARBOR BUSINESS Online

 11月2日、キューバのミゲル・ディアス・カネル評議会議長がモスクワを訪問してプーチン大統領と会談した。彼の訪問の僅か数日前に、ロシアはキューバ兵器の新しいタイプの導入に5000万ドル(55億円)を供与することを決めた。この資金でキューバは装甲車、ヘリコプター、小型兵器、そして戦車の部品などを備える予定だという。(参照:「El Nuevo Herald」)

◆オバマ政権時の国交正常化も水泡に帰す

 オバマ前大統領とラウル・カストロ前評議会議長によって2014年12月に米国とキューバとの間で国交正常化が半世紀ぶりに再開されたのであったが、トランプ大統領の反キューバ外交は遂にキューバがロシアとの関係を復活をさせる状況をつくり出してしまった。

 1962年のキューバ危機のあと、旧ソ連は米国の動きを監視する目的でキューバにルルデス電子情報基地を機能させていた。しかし、それも旧ソ連の崩壊などの影響で2001年に閉鎖した。

 その後、2014年7月にプーチン大統領が14年ぶりにキューバとの関係の強化の為にハバナを訪問するという出来事があったが、キューバとロシアの関係はまだ嘗ての旧ソ連の時代のレベルにはなっていなかった。

 そんな中の国交正常化で、いよいよキューバとアメリカにとって新たな時代の幕開けかと思われたが、そうはならなかった。

 オバマ前大統領のキューバとの雪解け政策は、トランプ大統領によってことごとく凍結され、寧ろ両国の国交正常化以前のキューバを孤立させるような政策を取り始めてしまったのだ。その為、期待されていた米国企業からの投資も遠のき、また米国人の訪問による観光収入も期待できなくなっている。それに加えて、キューバが頼りにしていたベネズエラが危機的状態にある為に、同国からの原油の供給なども充分に受けられな状態になっている。

◆旧ソ連時代の蜜月関係に戻るのか

 この様な状態に追い込まれたキューバは現状の社会主義体制を維持するために頼れる国を探す必要に迫られていた。そして、キューバ―が選択したのはロシアで旧ソ連時代の関係の復活であった。

 それが具体的に表れたのが冒頭で触れたミゲル・ディアス・カネル評議会議長のモスクワ訪問であった。その訪問の前日には、国連で米国によるキューバへの経済的制裁の解除を求める決議が米国とイスラエルの反対だけで賛成多数で採決されるという出来事があったが、逆に米国はキューバ、ベネズエラ、ニカラグアの3か国を暴政トロイカだとして新たな制裁を科したのだ。(参照:「El Pais」、「Diario Las Americas」)

◆トランプの「制裁」政策

 それまでに米国はキューバの軍関連企業を配下に収める組織GAESAとの取引を禁止させていたが、今回の制裁で新たにキューバ軍の支配下にある24の営利組織との取引も禁止するとした。また、1960年にフィデル・カストロ政権が、当時キューバに存在していた民間企業を乗っ取って国営化させた。その一連の企業に制裁を科す為に存在していたヘルムズ・バートン法の適用も検討する余地があるとした。(参照:「Diario Las Americas」)

 キューバのロシアへの接近を前にして、ロシアの軍事専門家イゴル・コロシェンコは「スプートニック」の取材に次のように答えたという。

「我々はキューバに戻らねならない」、「3つの基地が必要だ。一つは米国の動きをコントロールし理解できる電子情報基地。そして多用途の潜水艦の停泊できる基地。それに加えて、米国がINF(中距離核全廃条約)を破棄するようであれば、キューバにミサイルを配備することだ。そうすればキューバの安全と国際的なテロとの戦いに貢献することになる」

 ミハイル・マカルク将軍も「ラジオ・スプートニック」で、「ロシアは与えられた全ての機会を早急に利用すべきだという結論に至る。信頼出来る同盟国との協力を強固にすべきだ」と示唆したという。(参照:「Infobae」)

 現在、ロシア政府が明らかにしているのは、衛星測位システム「グロナス(Glonass)」の設置、そして「鉄道網の近代化」への投資を挙げている。(参照:「El Pais」)

 鉄道網の近代化ということと併行して発電システムの発展にもロシアはキューバに支援をするということで、既に18億ユーロ(2340億円)が2つの借款にて供与されている。(参照:「El Nuevo Diario」)

 米国のトランプ大統領が展開している外交は、キューバが嘗ての旧ソ連の関係復活を築くことを導いているようだ。一方のロシアは、北大西洋機構(NATO)がロシア領土に接近していることに対し、それを牽制する意味でNATOのリーダー国、米国にできるだけ接近するにはキューバにロシアの基地を復活させるのは絶好の機会だと見ている。

 筆者自身は、オバマの中東外交には大いに疑問を持っていた。しかし、キューバとの関係を復活させたのは良いことだと見ていた。しかし、トランプはそれをゼロにしてしまったのである。オバマがやったことをトランプはことごとく覆しているのだ。

 トランプが2期大統領を続けると世界のどこかで戦争が起きると考えるのは邪推に過ぎないのだろうか……。

<文/白石和幸  photo by Kremlin.ru (CC BY-SA 4.0) >

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身

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最終更新:11/7(水) 16:36
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