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羽生結弦を絶対王者たらしめる勝者のメンタリティー ~ビジネスパーソンの実践的言語学

11/8(木) 7:50配信

GOETHE

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、いざ開講!

「5%の壁が分厚くて、その分厚い壁を破っているほど時間を割くものではない。とりあえず全日本(選手権)までは練習もできないかなと思っています」ーーーGPシリーズ フィンランド大会で優勝を遂げた羽生結弦

五輪2大会連覇を成し遂げ、もはや勝つことではニュースにならなくなってしまったフィギュアスケートの羽生結弦。勝つのが当たり前になってしまった時に、モチベーションを維持するのは容易なことではない。

今シーズン、そんな彼のスケートを支えてきたのは、これまで公式戦で誰も成功していない4回転半ジャンプ(クワッドアクセル)への挑戦だった。「5%の壁」とは、クワッドアクセルの精度についてのコメント。「20%でいけるかな」とは語るものの、そこまで精度を高めるのは、羽生といえども至難の業のようだ。

フィギュアスケートのような採点競技は、目標の設定が難しい。野球やサッカーのように対戦する競技であれば目の前の勝利を目標にできるし、陸上や水泳のように記録が明確な競技なら、それを目標にできる。もちろんフィギュアも大会での優勝を目指して競い合うし、得点は記録に残る。

しかし大きな大会で勝ち続け、世界最高得点を叩き出している羽生にとっては、勝利や得点はもはやモチベーションになりえない。だからこそのクワッドアクセル。あえて無謀ともいえる夢に挑むことでしか、前に進むことができなかったのかもしれない。

だからこそ今シーズン、フィギュアスケート関係者のなかには、「羽生はクワッドアクセルを成功させたら、そのまま引退するのではないか」と言う人間も少なくなかった。しかし、クワッドアクセルの精度がなかなか高まらないなか、羽生が選んだ道は、自分の夢よりも目の前の勝利を優先することだった。

「今、こんなこと練習している場合じゃないなって気づかされた。こんなにも技術足りないじゃん、ていうのを突きつけられた」

クワッドアクセルがなくとも、羽生のプログラムはこれまでにないほど難易度が高いものになっている。そのプログラムを華麗に舞い、そして勝つ。「勝たなきゃ自分じゃない」。高い目標を設定し、それを追いかけつつも、現実からも目をそらさず、しっかりとやるべきことをやる。少なくとも今の羽生を見ている限り、高いモチベーションを維持できているようだ。

4年後の北京五輪まではまだ時間がある。羽生が3連覇を目指すかどうかはわからないが、まだしばらくは氷上の絶対王者として君臨し続けそうだ。

Text=星野三千雄

最終更新:11/8(木) 7:50
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