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地下アイドルへの「やりがい搾取」。圧倒的な力関係に泣く少女たち

11/8(木) 8:40配信

HARBOR BUSINESS Online

 ご当地アイドル(16歳)が、所属事務所社長やスタッフのパワハラを苦にして、自らの命を絶った。そこで明らかになったのは地下アイドルと呼ばれる少女たちの悲惨な待遇や処遇、過酷な労働状況。一体何が起きているのか?

⇒【画像】自殺した大本萌景さんの遺族が所属事務所からのパワハラがあったとして、松山地裁への訴状提出の前日の10月11日、東京で記者会見を行った

◆給料天引き、パワハラ、セクハラ 圧倒的な力関係に泣く少女たち

 AKB48が大ブレイクして以降、多くの少女たちの夢と希望を飲み込みながら、幾多のアイドルグループが誕生と解散を繰り返すアイドル戦国時代といわれて久しい。そんななか、今年3月21日、愛媛県松山市を拠点に活躍しているご当地アイドルグループ「愛の葉Girls」のリーダー・大本萌景さん(享年16歳)が自宅で首を吊り自殺した。

 彼女の遺族は、愛娘の死の背景には所属事務所からの「グループをやめるなら、違約金の1億円を支払え」などの激烈なパワハラがあったと主張し、9200万円の損害賠償を求めて10月12日、松山地裁に提訴するに至っている。

 この一連の騒動をきっかけに、ご当地アイドルの過酷な労働状況や、悲惨な給与事情の実態がにわかに注目を集めた。一部報道によれば、大本さんは、毎月20日以上稼働し、一日の拘束時間が10時間以上だったにもかかわらず、月給は3万5000円だったという。だが、驚くなかれ、先月まで約1年間、関西のご当地アイドルグループに所属していたAさん(18歳)によれば、これでも恵まれているほうらしい。

「『愛の葉Girls』は、地下アイドル好きなら誰でも知っているレベルの存在。ライブもすごく勢いがありましたから、あのくらい仕事とお金が回っていたのは納得ですね。私が所属していたグループでは、毎月の給料は1000円程度だし、周りのご当地アイドルや地下アイドルを見ても、ほとんどがゼロです。エグい芸能事務所だと、歌やダンスのレッスン代を無料にしてあげるよと言いつつ、給料から天引きしていたりしますから。学生のうちはまだ親のスネをかじって生活はできていますが、一人暮らしなんか絶対無理です」

 しかも、Aさんの場合、月に1~2回ほどの地方ライブに行く際の交通費さえも支給されず、自己負担。毎日のように週末はライブ、平日はレッスンと休みもほぼない状態だ。Aさんの周りの地下アイドルたちも、あまりの待遇の悪さに我慢の限界を超えているらしく、「アイドル活動は高校卒業まで」とボヤくコが大半だという。

 また、ハードなアイドル活動に見合わぬ給与水準以上に根深いのがセクハラ、パワハラだ。東京で地下アイドルグループのメンバーとして活動するBさん(20歳)によれば、日常茶飯事だとか。

「運営側のスタッフがほぼ強制的にメンバー数人を連れ出し、ファンの人と一緒にご飯に行くんです。要は飲み会なんですけど、私は絶対ヤラれる、ヤバいと思って断ったんです。でも事務所の社長に事情を伝えると、『そういう接待もしていかないと、この世界ではやっていけない。なぜお前は行かなかったんだ!』と逆に怒られました。実際、参加したコはトントン拍子に大きなイベントに参加したり、曲を出したりしてましたよ」

 世のファンたちを魅了する彼女たちの笑顔の裏には、こんな苦労が隠れていたのだ。

◆アイドルを搾取するのは一体誰なのか?

 アイドルを搾取しているのは誰なのかを考えるとき、「オタフクガールズ」という関西のアイドルユニットで活動する、みほたんさんの事例は示唆に富む。前出のAさんやBさんを「事務所所属型」とするなら、彼女は活動方針をすべて自分で決める「セルフプロデュース型」だ。その立場から地下アイドルの懐事情を語ってもらった。

「ライブイベントは月に8回程度。ステージが20分で、グッズやCD、チェキの物販を1時間やります。1回の売り上げは1万~2万円で、自分たちに入るのは、交通費を入れて多くても3000円ほど。残りは衣装代やレッスン代などに使う運営費としてプールしています。事務所所属のアイドルと違って私たちはフリーなので、お金がなくなったときにアルバイトをするか、ライブをやるのか選べるのがまだ救いです」

 ここから窺えるのは、地下アイドル活動は決して儲かる商売ではないということだ。誰も中間搾取はしていないのに、みほたんさんの手元にはわずかしか残らない。

「所持金が底を突くと、昼は登録制の派遣の仕事、夜は飲み屋で働いています。ユニットの相方は、撮影会モデルをしています。時給換算するともらえるギャラは普通の仕事より割はいいんですが、せっかく予定を空けていても予約が入らないこともあるそう」

 アイドルとしての活動費と生活費を自力で捻出する代わりに、彼女は自由を手に入れたというわけだ。だが、そうかといって彼女はもろ手を挙げて「セルフプロデュース型」をすすめるわけではない。むしろ、できることなら事務所に所属したいのが本音だ。

「毎日のようにライブに出させてもらっているのに、バイトをしなければ食べていけないようなお金しかくれない事務所は問題だと思います。でも、人気があって売り上げが立っているアイドルに対して、ちゃんとお金を還元してくれる事務所があれば入りたい。ただ、そういう会社は東京の大手事務所に限られていて、オーディションの対象は若いコが中心なんですよ」

 つまり、アイドルとして真っ当に活動するならば、大手芸能事務所に所属することが先決。それがかなわないからといって、地方のローカル事務所に所属するくらいなら、フリーで頑張っていくほうがまだマシなのである。アイドルを目指す少女たちに、大人はこの現実をしっかり伝えるべきだろう。

取材・文/野中ツトム・福田晃広・布施翔悟・沼澤典史・松嶋千春(清談社)

― 地下アイドル[やりがい搾取]の実態 ―

ハーバー・ビジネス・オンライン

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