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性犯罪防止プログラム導入の契機となった奈良女児殺害事件

11/9(金) 20:05配信

創

再犯率が5分の1になったという驚くべき報告

 『創』が性犯罪について取り組むようになったひとつのきっかけは、2015年の夏に起きた寝屋川中1男女殺害事件だった。殺害された男女中学生の映像が連日報道され、多くの関心を呼んだ。逮捕された人物に性犯罪の犯歴があったことから、再犯防止をめぐって大きな議論になった。
 そしてその11月、法務省の性犯罪再犯防止への取り組みに関わる調査報告が「犯罪白書」で公表された。内容を報じた読売新聞の見出しを紹介すると「性犯罪後の講習効果 再犯率1/5に」。つまり再犯防止プログラムを受講した性犯罪者の再犯率が、受講しなかった者の5分の1に減ったという驚くべきデータだった。
 このデータの評価をめぐっては調査手法に疑問を呈する向きもあるが、ともあれ治療プログラムが大きな注目を浴びることになった。
 そのプログラムの具体的内容について教えてほしいと、旭川刑務所に服役中の樹月カインさん(仮名)と手紙をやりとりするようになったのはその頃だった。そして本誌の2018年2月号に樹月さんの手記「懲役13年で服役中のある性犯罪者の告白」を掲載した。
 ただ、実は本誌とこの治療プログラム導入の関わりはもう少し古い。プログラムは2006年に導入されたのだが、そのきっかけとなったのが2004年に起きた奈良女児殺害事件だった。その事件で死刑判決を受けた小林薫さんは、公判の途中で、本誌に手記を連載。2006年は公判傍聴のために毎月、奈良に通う日が続いた。
 小学生の女児をわいせつ目的で拉致し殺害したとされた小林さんは、同年死刑が確定。2013年に執行された。私は2005年11月に彼に接見したのを機に死刑確定まで頻繁に関わった。
 小林さんは、もう死んでしまいたいという思いから公判中も一貫して死刑を望み、死刑判決を宣告された瞬間に、被告席でガッツポーズをしたことで話題になった。通りすがりの女児をいきなり拉致して殺害したという凄惨なその事件は、性犯罪をめぐる大きな議論を巻き起こし、性犯罪者の情報を公開する「ミーガン法」の導入を求める声も多かった。そして法務省は、本格的な性犯罪に対する再犯防止プログラムを導入する方針を決め、刑務所などにそれが導入されていったのだった。
 ちなみに2006年、真っ先に導入を決めたのは、小林さんが拘留されていた奈良少年刑務所だった。私は当時、公判のたびに奈良に通い、小林さんに接見するために奈良少刑を訪れていたから、そのプログラムがどんなふうに実践されていくのか、ぜひ知りたいと思っていた。

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最終更新:11/10(土) 11:35

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