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科学に頼らない「不安との付き合い方」を説く元エクストリームスキーヤー

11/9(金) 17:40配信

ニューズウィーク日本版

<思考の力で恐怖をコントロールしようとするのは間違いだと、北米初の女性エクストリームスキーヤーとして活躍したクリステン・ウルマーは言う。不安の「声」に耳を傾けよというが、それは果たしてどんな手法なのか>

漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の名キャラクターで悪役のDIO(ディオ)は、人の生きる意味とは「不安や恐怖の克服」だと言った。名声を得るのも、友人や家族をつくるのも、すべては「自分を安心させるため」だと。

メンタル防衛に必要なのに、職場から消えたものは「雑談」と...

この人類の大命題ともいえる「不安との付き合い方」に真正面から取り組んだのが、12年間、決められたコースのない高山の斜面を滑降するエクストリームスキーの選手として活躍し、後に「マインドセット・ファシリテーター」に転じたクリステン・ウルマーによる『不安を自信に変える授業』(筆者訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)だ。

不安の克服を謳うワークショップや書籍は数多い。ところがその多くは、理性や知恵を使って不安の正体を科学的に解明し、思考の力で恐怖をコントロールしようというものだ。ウルマーは、こうした手法に真っ向から異議を唱える。

北米初の女性エクストリームスキーヤーとして、命がけの体験を繰り返し、その過程でときに不安を追い求め、ときに押し込めてきたウルマーは、不安という感情の問題を解決するのに、思考や理性を用いるのは完全な誤りだと断言する。

ウルマーは、人間とは1万人の社員からなる企業であり、思考も、コントロールも、喜びも、そして不安や怒りも、本質的にはその平等な一社員にすぎないと定義する。ところが思考などの「いい」社員ばかりを優遇し、不安や怒りを「悪い」社員とみなして窓際に追いやってきた結果、現代社会では不安障害や暴力事件など、虐げられた不安や怒りのゆがんだ発露が多くみられると訴える。

問題は不安そのものではなく、不安を拒絶したり、押し込めたりしようとする反応のほうにある――。そう考えるウルマーは、不安感情という社員の「声」にきちんと耳を傾けてやりさえすれば、ゆがんだ自己表現はやみ、不安がいつまでも体の中に居残ることはなくなると言う。

ウルマーは、不安をはじめとするネガティブな感情に対して、積極的に働きかけようとは言わない。不安や怒りを感じるのは楽しいことだとも言わない。ただ体で不快感を味わい、不安や怒りの声を聴き、さらにはその声に「なる」ことができれば、ホースを水が流れるように、感情は自然と消えていくと言う。

そして、ただネガティブな感情が消えるだけでなく、そうした感情を学びや成長の材料にすることもできると主張する。正しい姿であらわれた不安や怒りは、賢明な判断や、モチベーションにつながるというのだ。そうした「頭脳という知性」とは一線を画した「感情的知性」を活用できれば、自分のポテンシャルをフルに発揮できるようになると著者は言う。

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