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メンテナンス費用に泣いた964型911 カレラ4 ──【連載】 ベスト・ポルシェはコレだ! 第1回 河村康彦編

11/9(金) 21:11配信

GQ JAPAN

ポルシェの第1号車が誕生したのは1948年。ゆえに、2018年は70周年目の節目の年だった。さらば世のポルシェ乗りに尋ねん、あなたにとってのベスト・ポルシェは?と。題して「マイ・ベスト・ポルシェ」なる連載の第1回は、モータージャーナリスト・河村康彦の登場だ。果たして、やっぱり「最新が最善」なのか?

【写真を見る】中古車市場で高騰中の964とは?

長期ローンで購入した911

今でも強く印象に残る”マイ・ベスト・ポルシェ”に挙げたいのは、1989年に登場したポルシェ初の量産4WDモデル「964型911 カレラ4」だ。

“5ナンバー”枠に収まるコンパクトなボディに、3.6リッターの水平対向6気筒ツインプラグ式エンジンを搭載し、電子制御式のディファレンシャル・ロック機構を備えたフルタイム4WDシステムでもあり、さらにパワーステアリングやエアコンなど、それまでのポルシェでは考えられない”ハイテク”な装備が話題を呼んだ。

このモデル、かつてボクも所有していた。走行距離約2万km、1年落ちの中古であったが、長期ローンを組んでなんとか手に入れたのだ。

「クラッチやトランスミッションにクセがあり、ナーバスで扱いづらい」という前評判とは異なり、大排気量ゆえのトルクでスタートは楽々。そしてひとたび走り始めれば、リアエンジンの”奇異”なレイアウトとは思えぬ高い安定感に満ちた重厚な走りに、一瞬にして恋に落ちてしまったのである。

この911は僕にとっては2台目のポルシェで、約5万kmをともに過ごした。「金庫のようだ」といわれたボディの例外的な堅牢感は、ドアを閉めたときに発する「カンッ」という音を聞くたびに実感できたし、洗車すると手のひらに伝わって来たフロントフェンダーの丸みを帯びた稜線の感触なども、いまでも鮮明に思い起こすことができる。

ポルシェらしい走りとは何か? その答えを教えてくれた911

そして、この964型の911カレラ4に乗って、僕はポルシェに畏敬の念を持つようになった。このカレラ4とその前に保有していたフロント・エンジンの944Sの2台のポルシェを通して、「ポルシェというブランドが、確固たる信念に基づいて、1本筋の通ったクルマづくりのフィロソフィをもっている」ことがわかったからだ。

911を手に入れる前に乗っていた、”マイ・ファースト・ポルシェ”である944Sは、エンジンはフロント搭載だったが、トランスミッションをリアアクスル側に置いた「トランスアクスル方式」の後輪駆動車だった。エンジンは水冷の直列4気筒である。空冷の水平対向エンジンをボディのリアエンドにマウントし、かつ4WDシステムを採用したカレラ4とは、「何もかもが違う」成り立ちだ。

ところが、911の走りには、明らかに944と共通する香りが漂っていた! 「走りのテイストは、この2台ではまったく異なるはず」と、思っていたのに、両車に共通する”ポルシェらしい走り”を感じた。これには心底驚き、やがて畏敬の念を抱くにいたったのである。

ポルシェと名のつくクルマは、エンジンをどこに搭載してあっても、トランスミッションをどこに置いていても、駆動方式が異なりさえしても、走りのテイストについては一貫したものを実現しているのである。

「どのポルシェに乗ってもポルシェらしさが味わえる」のは、現在の911シリーズや718ボクスター/ケイマンなど、最新モデルでも変わらない。テイストは脈々と受け継がれている。

ただ、今振り返ると、964型911 カレラ4は“ポルシェらしさ”があったとはいえ、独自色が強かった。昨今追求される”効率”とは無縁だった当時のクルマづくりは、その分ことさらに色濃い個性を与えていたのだと思う。そんな個性も、ぼくのお気に入りのポイントだった。

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最終更新:11/10(土) 16:23
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