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刑務所を恐れないストーカーを止める方法

11/9(金) 9:15配信

プレジデントオンライン

なぜストーカーによる事件は後を絶たないのか。ストーカー対策のNPO法人を運営し、これまで500人以上のストーカー加害者に向き合ってきた小早川明子氏は、「取り締まるだけではストーカー行為はなくならない。刑罰を恐れない加害者には治療が必要だ」と言い切る。ストーカーは犯罪であるだけではなく、「やめたくてもやめられない」という“疾患”だからだ――。(後編、全2回)

■「有能なビジネスパーソン」も多い

 ――ストーカーになる人の特徴はありますか? 

 執着心が強く、行動力があって「駆動力(刺激に対する反応の早さ)が高い」。頭がいい人も多いです。こうした力が仕事に向けられると、高い成果を挙げられますから、有能なビジネスパーソンなども珍しくありません。男女は関係ありません。

 ――小早川さんのケースのように、恋愛関係が発端ではないこともあります。

 恋愛関係にあった人が加害者になるケースはもちろん多いですが、親子、上司部下、ご近所、医師と患者など、さまざまな関係で起きています。会ったこともない、SNSでたまたま見た人に対して、一方的に執着して、すべてを知りたくなってストーカー行為をしてしまう。ブログの中で幸せそうな様子をしているのをたまたま見て、面識はないけれど嫉妬から攻撃してしまうというストーカーもいました。

 ――ストーカー被害にあわないようにする方法はありますか? 

 難しいですね。ストーカーになる人というのは、スイッチが入らなければ普通ですし、被害者はたまたま地雷を踏んでしまったようなもの。出会った相手がストーカーになる素質を持っていれば数カ月で問題が生じ、別れようとすればストーカー化してしまう。「こうしたら被害にあわない」というものは少なく、誰もが被害者になりえます。強いて言えば、顔の見えないSNSでの関係は深まる前に用心してほしいし、交際中に圧迫を感じたらすぐに別れる決断をしてほしいです。別れる決断をしたら計画を立てて慎重に実行します。それでも、別れた相手がストーカーになるのを防げないことはあります。

■8割は警察からの警告でやめられるレベル

 ――そうすると、ストーカー被害をなくすためには、加害者側に働きかけるしか手がないのでしょうか。ストーカーの加害者に対しては、どのように働きかけているのですか? 

 まずはこちらから連絡して、被害者が困っていることを伝え、直接の接触は避けてほしいと頼みます。その上で、言い分を聞きます。多くのストーカーは被害者意識を持っており、言い分は数えきれないほどあります。「一方的に別れられた」「約束違反だ」「誠意がない」「人として間違っている」「向き合っていない」「責任をとれ」などは、まるでストーカーの共通言語のように、耳にしないことはないくらいです。

 言い分を聞きながら、私は次の3つのこと、「相手にはあなたを嫌う自由がある」「自分の感情の処理は自分でしなければいけない」「違法行為は絶対にしてはいけない」を手放さないで対話します。私流の鉄則です。初めは激しく対立しますが、この3つの常識(だと私は考えます)を受け入れることができれば、たいていの言い分は意味をなさなくなり、消えていきます。例えば、交際中に「浮気された」「バカにされた」「束縛や監視をされていた」などと、交際中のことを問題視するストーカーは少なくありませんが、それが事実がどうかよりも、そういう人と別れずにいた責任は自分にあることの問題性に目を向けさせます。「相手に金をだましとられた」「婚約不履行だ」などと、被害者の不法行為で損害を受けたという主張については、弁護士のところに連れて行って相談させることもあります。

 こうして言い分をひとつひとつ消していくと、大半のストーカーは「相手は自分のために生きているわけではない、自分には相手に反省や変化を要求する権利はない」ことを理解して、ストーカー行為をやめるようになります。全体の8割くらいでしょうか。こういう「分かれば止められる」ストーカーは、おそらく警察から警告を受ければストーカー行為をやめられる人たちです。私はこれらの人たちを、相手に関心を持ちすぎるという点で、健康ではない=病態レベルのストーカーだと呼んでいます。

 ――それでもストーカー行為をやめない人は? 

 こういった理性に働きかける対話(カウンセリング)をしても止められない人がいます。彼らの相手に対する接近欲求は格段に高く、思考が引きずられて欲求を正当化してしまうため、接近すべきでないと「分かることができない」、たとえ「分かったとしても、やめられない」ストーカーです。行為をエスカレートさせ、相手を傷つけて傷害罪などで服役した後も、また同じことを繰り返すことがある。以前はこうした加害者に出会うと、被害者を傷つけることがないよう、見張ることしかできませんでした。解決策(治療法)がなかったのです。

その治療法が、2013年の秋に、やっと見つかりました。千葉市の下総精神医療センターの薬物依存治療部長、平井愼二医師から声をかけていただき、カウンセリングだけでは治らないストーカーは行動制御ができない障害、つまり疾患であることを指摘されたのです。先生は「条件反射制御法」という治療法の開発者で、ストーカーも治すことができると提案してくれました。 ※初出時、「条件反射抑制療法」としていましたが、正しくは「条件反射制御法」でした。訂正します。(11月12日11時15分追記)

 カウンセリングと治療は異なります。カウンセリングは、意識(心境)にアプローチし、相手も自分も不足しているところがある、許しあおうという心境に立つところを目指しますが、治療は、無意識の脳の働きそのものにアプローチし、不足しているところを治すのが目的です。病態レベルを超えた、ブレーキ(行動制御能力)に障害があるストーカー=疾患レベルのストーカーも治療可能になるという出口が見えたのです。

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