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川谷絵音「強がらずにはいられない弱虫」前編

11/10(土) 22:10配信

エスクァイア

マーベリック。それは一匹狼であり、“異端児”。高校時代は常に学年順位ひと桁台の成績で、推薦で理系の大学院まで進んだという川谷絵音さん。音楽教育を受けているわけではない川谷さんが、「ゲスの極み乙女。」を結成し、メジャーデビューするまでわずか2年。現在は4つのバンドで活動し、相当数の作詞作曲をすべて自身で行っている。今度は何をやってくれるのか? 彼のもつマーベリックな世界観に迫ります。

【 けん玉チャレンジ 】川谷絵音さんへ一問一答!

僕にはAパターンの 人生しかないわけで Bパターンの人生を 想像しても意味がない。 それは時間の無駄だと思います。

 インタビュー場所であるホテルのコーヒーハウスの入り口で待っていると、海浜公園での撮影を終えた彼がプラスチックの容器に入った焼きそばを抱えてやって来た。海の家で売っていそうなあれである。

「売店に売り上げ第1位って書いてあったんですよ。それ見たらどうしても食べたくなって。ここで食べても大丈夫かな」。

 季節外れの海のホテルは閑散としていた。が、焼きそばの持ち込みに優しい視線を向けるほどの寛容さはない。けれど彼は“大丈夫かな”と一応は言ったものの、さほど周囲をはばかる様子もなく焼きそばを食べ始めた。少し、拍子抜けした。2016年、人気女性タレントとの不倫報道に端を発した一連の騒動は、人気ミュージシャンの枠を逸脱して彼を有名にしたし、それに対する彼の反応にはややアグレッシブさが感じられた。そのせいだと思う。神経質で、自己顕示欲の強いタイプを想像していたのだ。が、目の前にいる彼は愉快そうに好きな食べ物の話をしている。

「確かに、以前、取材とかで会ったことのある人が今の俺と話をしたら驚くかもしれません。とがってた時代がけっこう長かったんですよ。自分の中に完全な正解があって、それ以外のことはすべて論破したかった。だから“そういう質問されても”みたいなことを取材でも平気で言っていました。失礼と言われても仕方ないレベルだったと思います」。

 その変化はあの騒動がきっかけだったのだろうか。

「いや、変わったのはつい最近です。今年の後半に入ってからじゃないかな。俺の中の正解が変わったわけではないんです。ただ、自分にとっての正解が他の人の正解ではないという当たり前の事実を理解したんです。Twitterやネットをやっていても思うけれど、しょせん、わかり合えないわけでしょう。諦めではなくて、それが当たり前のことなんですよね」。

「ゲスの極み乙女。」(以下ゲス乙女)の代表曲といってもいい『私以外私じゃないのよ』。この楽曲が、当時の彼の心境そのままだったのだそうだ。

「自分を強く持とう、ってことですよね。でも、今は周囲に合わせることが暗黙の了解になっているような時代じゃないですか。そうしなければ批判されるし。もちろん、俺が周囲に合わせる人間になるってことではないですよ。やりたいことをやることに変わりはない。ただ、そのことに周囲を巻き込まないというか、自分の価値観を押し付けたり、自分の正解と異なる人を批判するのは違うかなと。それで俺、Twitterの使い方とか、すごくうまくなってきたんですよ」。

 彼はTwitterを2010年に、インスタグラムは2012年に開始している。メジャーデビューが2014年だから、多くの人が彼を知るようになったときには、彼はSNSの使い手だったわけだ。彼のインスタグラムに寄せられているコメントをさかのぼってみると、有名になるとはこういうことかを垣間見る気がする。当初はCD発売やライブを心待ちにするファンのメッセージばかりだったのが、売れるにしたがって、嫉妬なのだろうか。たたきコメントが散見されるようになり、あの騒動のころには「死んでください」だの「どう責任取るつもりなのか」とか、赤の他人によくそんなことが言えるなという罵詈雑言で埋め尽くされている。それに対して、彼は真っ向正面から戦った。

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最終更新:11/10(土) 22:10
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