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極右ブラジル大統領ボルソナロ最初の試練。在イスラエル大使館移転を巡るアラブ諸国との板挟み

11/14(水) 15:40配信

HARBOR BUSINESS Online

 来年1月1日からブラジルの大統領に就任することになっているジャイル・ボルソナロに最初の問題が起きている。

 問題とは、彼は選挙戦中から在イスラエルのブラジル大使館をテルアビブからエルサレムに移館させると断言していたことについてだ。

◆大使館のエルサレム移転を翻意?

 彼がまだ下院議員で大統領候補という段階ではこの断言は問題にされなかった。ところが、彼が次期大統領に就任することが決まった途端、事態は一変した。

 最近のボルソナロは、エルサレムへの移館について尋ねられると「まだ決定されてはいない」という発言に変わっているのである。(参照:「ABC」)

 その理由は、大使館をエルサレムに移すことにアラブ諸国が猛烈に反発しているからである。それがブラジルの重要輸出品目である肉のアラブ諸国への輸出に影響する可能性が出ているのである。

◆アラブ諸国反発の「前兆」となった2つの出来事

 その前兆として、つい最近次の二つの出来事があった。

 テメル現大統領政権下のアロイシオ・ヌネス外相は、エジプトを訪問してシーシ大統領そしてサーメハ・シュクリ外相と会談する予定になっていた。ところが、先方から日程上の都合がつかないということで、ヌネス外相の訪問を受け入れることができないという回答あったのである。しかも、その代替日の提案もないという。

 この通知を受ける2日前に、ブラジル外務省の二人の官僚からロイター通信に先方の取り消しは大使館を移すことが理由だと伝えられたそうだ。(参照:「HispanTV」)

 同様に、ブラジルの貿易ミッションがエジプトを訪問する予定になっていたのもキャンセルせねばならなくなったという。これも日程の都合上というのが先方からの理由だという。(参照:「HispanTV」)

◆「ハラール」肉最大の生産国であるブラジル

 ブラジルの輸出企業の中でも特に不安を強く感じているのは肉類の輸出業者であるという。農業牧畜相に就任する予定になっているテレサ・クリスチーナ・ダコスタのもとには輸出業者からの不安が伝えられているそうだ。

 アラブ諸国への2017年の輸出金額は135億ドル(1兆4900億円)。肉類については、今年に入って1月から9月までの輸出量は22万9000トン、アラブ諸国向けはブラジルの肉類の全輸出量の19%を占めるという。しかも、ブラジルはイスラム法で許されている「ハラール」肉では最大の生産国でもある。(参照:「HispanTV」、「ABC」、「El Periodico」)

◆ボルソナロの背後にいる宗教保守勢力

 ボルソナロがエルサレムに大使館を移すことに強い関心があるのは、今回の選挙ではキリスト教の福音派で、その中でも数百万人の信者を数えるネオペンテコステ派が彼を強く支持していた。しかも彼の3人目の婦人(彼は2度離婚)は福音派で、2016年にヨルダン川で彼も洗礼も受けている。

 福音派はエルサレムにキリストが再来するといった信仰を持っており、イスラエルがエルサレムに首都を構えるというのは福音派の願望なのである。(参照:「El Periodico」)

 ボルソナロは選挙で公約した通り、大使館をエルサレムに移すことは福音派に応える為だという考えを持っている。この点は、同じく福音派の支持を受けて勝利したトランプ大統領と類似している。

 また、ボルソナロはルラとルセフとによる社会主義政権を嫌悪しており、パレスチナを国家と見做すこの二人の元大統領の外交に終止符と打ちたいと考えたようである。

 パレスチナを国家と承認したのはルラ、そしてルセフはイスラエル政府が任命した在ブラジル大使ダニー・ダヤンの入国を拒否したことがある。彼がパレスチナの地に入植活動を繰り返しているその元リーダーだったというのが拒否した理由であった。(参照:「El Pais」)

 それに対して、親イスラエル派のボルソナロは選挙戦中から「大統領に選出された暁には、ブラジリアのパレスチナ大使館を閉鎖させる」と明言していた。(参照:「HispanTV」)

 ジェトゥリオ・バルガス財団の政治学教授ギジェルモ・カサロエスは「大使館をエルサレムに移すという極端な策を取らなくても、米国そしてイスラエルに接近することは十分に可能だ」と述べている。この考えに同調しているのは下院議員で外交委員会のメンバーリカルド・フェラコで、彼は「ボルソナロはそれがもたらす影響を十分に考慮することなく公約してしまった」と語っている。(参照:「El Periodico」)

◆専門家は「公約通りの外交は危険」

 一方のネタニャフ首相は「ボルソナロの勝利はブラジルとイスラエルの間の関係強化によって熱い友好をもたらすことになろう」と語り、彼の側近のひとりは「首相は(ボルソナロの大統領)就任式にブラジルを訪問することになるであろう」とAFP通信に伝えたそうだ。これが実現すれば、イスラエルの首相がブラジルを訪問するのは初めてとなるそうだ。(参照:「El Espectador」)

 あと50日余りでボルソナロが大統領に就任する。彼が選挙選中に公約していた外交をその通り展開させるようになると、多くの専門家は危険を伴うことになると指摘し、この50年間維持して来たブラジルの外交と矛盾したものになり、アラブ諸国との商取引に弊害をもたらすようになると指摘している。(参照:「ABC」)

 ボルソナロは軍人としての経験は深いが、外交は全くの素人。素人外交というの常に弊害をもたらすことになるのが鉄則である。

<文/白石和幸 photo by Senado Federal via flickr(CC BY 2.0)>

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身

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最終更新:11/14(水) 16:22
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