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あのハイテク保温マグカップ、その“地味”なる進化から見えてきた「すごい」こと

11/15(木) 8:11配信

WIRED.jp

Emberというスタートアップを覚えているだろうか? 社名にはピンとこなくとも、コンセプトは覚えているかもしれない。飲み物を何時間も好みの温度に保ち続けてくれる、あのスマートなハイテクマグカップをつくっている会社だ。

9,000円するハイテクマグカップの秘密とは

今年10月になって、このマグカップがまたちょっと進歩した。EmberのアプリがiOSの「ヘルスケア」アプリと連携され、アップルのカフェイントラッキング機能がより簡単に使えるようになったのだ。さらに米国およびカナダでは、アップルストアとウェブサイトで「Ember Ceramic Mug」と「Ember Travel Mug」の両方が購入できるようになった。

こうした新しい動きは、世界を激変させるようには見えないかもしれない。しかし、一歩離れて見てみよう。いや、一歩どころではなく、Ember Travel Mugがクラウドファンディングサイトの「Indiegogo」で初めて提案された15年10月にまで戻って考えてみてほしい。

当時、熱化学の研究者であるクレイ・アレクサンダーにとってEmberは長年の夢だった。そして、Indiegogoで資金を集め始めた同社の製品は、Kickstarter全盛期によく見られたある製品群の典型例でもあった。つまり、用途の狭さと価格の高さが、利便性をはるかに凌いでしまう製品だったのだ。

EmberがIndiegogoで初めてTravel Mugを発表したときは、発売までの期間は6カ月となっていた。クラウドファンディングでの資金調達を目指す、見込みのあるガジェットに手を出したことがある人なら、その6カ月間で何ができるか──もっと正確に言えば、いかに何もできないかわかるだろう。つまり、製品の生産ができないのだ。

宣伝通りに機能することの「すごさ」

ウェブ上には、アイデアは優れているものの発射台から飛び立てなかったプロジェクトが溢れている。あるいは、もっと率直に言えば、発射台の付近をうろついていただけのプロジェクトも大量にある。

Emberは当初、最終的には消滅して悪評をもたらす幻想であるかのように思われた。ちなみに、こうしたことは実際に起こっている。例えば、iPhone用のセカンドスクリーンを謳った「popSLATE 2」のメーカーは、2016年3月にIndiegogoで100万ドル(1.1億円)以上の資金を調達したが、約束の製品を届けることも返金することもなく倒産した。このような結末を迎える製品は決して少なくない。

ところがEmberは違った。Travel Mugをちゃんと納品しただけでなく、次にCeramic Mugも実現したのだ。そしてIndiegogoを卒業し、自身のウェブストアをもつにいたった。特筆すべきは、その製品が広告に謳われている通りに機能することである。

公平を期すために書いておくと、Emberを使った『WIRED』US版スタッフ全員がこの製品に感激したわけではない。例えばあるエディターは、Ceramic Mugには染みが残って「汚れているように見える」と話している。

また高価なわりに、特に付属のコースターなどは格別に高級なルック&フィールというわけでもない(コースターが充電器の役割も果たすことを考えると、機能上の理由かこうしたデザインになっていると考えられる。熱分配のために伝導性のマグ素材が必要だったのだろう)。Travel Mugの場合は、数時間にわたって温かさを保つ真空断熱製品が、はるかに安い価格で多数用意されている。

だが、高級コールドプレスジューサー「ジューセロ」の失敗を体験した世界において、Emberの魔法のような保温マグカップが単に現実に存在するだけでなく、宣伝通りに機能し今後の進歩も期待できるということは称賛するに値する。どんなに欠点があろうともだ。

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最終更新:11/15(木) 8:11
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