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【海外ボクシング】ウシクはヘビー級の新星になれるか きわどいペース争いを痛烈KOで締めくくる

11/15(木) 15:23配信

ベースボール・マガジン社WEB

 ボクシングの『知性』が、縦横に張り巡らされた見事な戦いだった。10日、イギリス・マンチェスターで行われた主要4団体統一世界クルーザー級タイトルマッチ12回戦である。チャンピオンのオレクサンダー・ウシク(ウクライナ)がチャレンジャーのトニー・ベリュー(イギリス)を8回2分ちょうどでノックアウトし、通算7度目の防衛を果たした。あまりにも豪快なフィニッシュもむろんながら、それまでの展開が実におもしろかったのだ。(文/宮崎正博)

【この記事の写真】オレクサンダー・ウシク(ウクライナ)とチャレンジャーのトニー・ベリュー(イギリス)

ベリューのカウンター戦法に苦戦

 ウシクの実力、安定感はプロ16戦(全勝12KO=この日の結果を含む)のみですでに証明されている。ただし、プロとしての魅力については批判的な声も少なくない。

 身長190cmのサウスポーはとにかく安全運転に過ぎる。動きは抜群にいいし、スピードもあるのだが、その攻めはすべて自分の安全圏からのもの。そんなチャンピオンに対し、ベリューは「アウトボクシングをやらせない」と宣言してリングに向かった。

 クルーザー級のWBC王座を放棄してヘビー級に上がり、元チャンピオンの人気者デビッド・ヘイ(イギリス)を2戦連続でTKOに下しているベリューは、ウシク相手に徹底したカウンターアタックを仕掛ける。ウシクの攻め終わりを待って強烈な右ストレートを見せた。

 ウクライナ人はだから、挑戦者を攻めきれなかった。4回にはのっけに左ストレートで相手をぐらつかせたが、ラウンド半ば、下がるベリューを追ったところに右カウンターを食って、いったん自分の防衛ラインを再確認せざるをえなくなった。

 ベリューのほうはラウンド終盤に手数をまとめて印象点のアップにとりかかる。ポイントの上では微妙ながらも、ペースはベリューの手の中にあった。

一撃で評価も急変

 流れが急変するのは7回だ。ウシクの波状攻撃が一気に加速する。右ジャブがクリーンヒットして、ベリューの心理をかき乱した。常に退いて戦っていたベリューは、戦いが自らの優位で進んでいるとは確信できていない。だから、前に出る。そうなると、ウシクの左右の動きが活きてくる。速いコンビネーションがうなりを上げる。いつもなら、それでも『安全第一』のウシクだが、今回は次のラウンドでビシッと決めた。ベリューの手立てを切り崩し、危険な右パンチの軌道とタイミングを読み切ったからこそできたことだ。

 ウシクの左ストレートがジョーをかすめる。ベリューが立ち尽くしたその一瞬を見逃さない。すかさずワンツー。最後の左をアゴに命中させると、挑戦者の191cmの体が吹っ飛ぶ。ロープ最下段で頭部をバウンドさせたベリューはそのまま立ってこなかった。

 ボクシングとはおもしろいもので、ただの一撃でその評価を一変させる。WBSSファーストシーズンで強打のマイリス・ブリエディス(ラトビア)、ムラト・ガシエフ(ロシア)と連勝して優勝しながらも、反応はいまひとつだったのに、今回はまるで違う。『年間最高選手』という声もあったし、ヘビー級戦線の強力なタレントとしてクローズアップされ始めた。

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