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台湾統一地方選で最大野党が起こす「韓流ブーム」

11/15(木) 12:23配信

Wedge

 11月24日投票の台湾統一地方選挙は、全22県市の首長と議員らがいっせいに選出され、2020年1月の台湾総統選挙の行方を決める前哨戦だ。決戦の日が近づく中、台北に次ぐ台湾第二の都市で、南部の中心である高雄市長選挙で最大野党・国民党の韓国瑜候補(61)が「韓流ブーム」と呼ばれる旋風を巻き起こしており、世論調査の支持率で与党・民進党の陳其邁候補(53)を突き放している。

 高雄市中心部の鳳山地区で10月26日晩に開かれた韓候補の総決起集会では、主催者発表で5万人が終結。群衆は会場を埋め尽くし、国民党支持者が好む「中華民国旗」を振って声援を送った。民進党は当初、金城湯池である高雄での楽勝を予想し、明らかに油断していた。12年にわたり高雄市長を努めた民進党の大物、陳菊総統府秘書長は、市長候補を党内自派閥から出すことにこだわった。党内選で陳氏が候補者に選ばれた後も冷淡な態度を取り続け、党内にしこりを残した。

 与党が内紛にかまける間、韓候補は短期間で急速に支持者を拡大した。主戦場はインターネット。世論に強い影響力を持つ台湾最大の電子掲示板「PTT」を発言の主舞台とした。人気ブロガー「館長」と対談する動画も注目を集めた。

 選挙戦も独特で、選挙事務所を設けず、旗やのぼりを一切使わない簡素な手法を「ミネラルウォーター1本の戦い」とキャッチフレーズ化。有権者に新鮮感を与えた。

 台湾のテレビ局TVBSが10月半ばに発表した、高雄市長選挙に関する世論調査の結果によると、韓候補の指示率は42%で、陳候補の35%に大きく水を空けている。特に20~29歳の若年層だと、韓候補の57%に対し陳候補は19%にとどまった。30~39歳の層でも韓候補への支持が多い。韓候補のネット重視の成果といえそうだ。 

 民進党もにわかに危機感を募らせ始めた。10月半ば、鳳山地区で開いた総決起集会後、同党主席の蔡英文総統、陳菊氏、高雄市の許立明代理市長ら最高幹部が集まって、急きょ選挙情勢の分析を行った。民進党の支持基盤である台湾独立派のアピールを狙い、陳候補を中心に中国併呑に反対する集会の開催も決めた。

 韓候補が支持を集める背景には、約20年にわたる民進党市政への飽きと、高雄経済の低迷など地元特有の事情もある。韓候補は、職や高賃金を求めて台北など北部に向かう若者を「北漂族」と呼んで同情し、地元経済の振興を第一の公約として掲げた。

 与党は「韓流ブーム」の波及を警戒している。屏東県、雲林県など韓候補が応援に駆けつけた地区では国民党候補の支持が上向いた。桃園市など北部に波及する可能性を指摘する声も出ている。このまま「韓流ブーム」は全国を飲み込んでいくのか。選挙の行方から目が離せない。

井上雄介 (台湾ライター)

最終更新:11/15(木) 12:32
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