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なぜ天才営業の話し方はイライラさせるのか?

11/15(木) 5:00配信

日経ビジネスオンライン

 相手の話を一切聞かず、自分の喋りたいことをとめどなく喋りつづけている。それなのに、なぜか契約をたくさんとってくる営業がいます。ある種の天才と言ってもよいでしょう。

 なぜそんなことができるのでしょうか。鷲沢社長と柿木リーダーの会話を読んでみてください。

●柿木リーダー:「社長、今月からお世話になっております、柿木です」

○鷲沢社長:「お疲れ様」

●柿木リーダー:「先ほど商談から戻ってきました」

○鷲沢社長:「どうだった。君は前職でも営業だったと聞いたが違和感はないか」

●柿木リーダー:「この会社が創業まもないベンチャーと知って興味を持ちました。若い子が多いですから私みたいな年寄りが必要かと思いまして」

○鷲沢社長:「年寄りといっても、まだ30代半ばだろう」

●柿木リーダー:「創業3年。フィンテックの分野は今後伸びていきますからね。楽しみです」

●「私の話を聞いているのか」

○鷲沢社長:「以前は食品関係のメーカーにいたそうだね。フィンテックには詳しいのか」

●柿木リーダー:「今日の日経新聞にも載っていました。社長、読みましたか。日本初のフィンテックベンチャーが大手メガバンクにM&Aされた記事――」

○鷲沢社長:「おい」

●柿木リーダー:「中国でもフィンテック関連の起業家が増えているようで――」

○鷲沢社長:「おいって!」

●柿木リーダー:「はい」

○鷲沢社長:「私の話を聞いているのか」

●柿木リーダー:「ええ」

○鷲沢社長:「本当か。じゃあ、答えてくれ。私は君にいくつか質問した」

●柿木リーダー:「質問をしたのですね。どういう質問なんでしょうか」

○鷲沢社長:「私が質問しているのに質問で返すな」

●柿木リーダー:「……」

○鷲沢社長:「覚えていないのか」

●柿木リーダー:「何の話を、ですか」

「傾聴力がまったくない」

○鷲沢社長:「覚えていないわけじゃないな。そもそも私の話を全然聞いていない」

●柿木リーダー:「傾聴力を身につけろ、ということですか」

○鷲沢社長:「もう一回聞くぞ。君は以前、食品系メーカーで営業をしていた。フィンテックの営業になって違和感はないか」

●柿木リーダー:「傾聴力を身につける研修なら前の会社で受講しました」

○鷲沢社長:「……」

●柿木リーダー:「そのときの講師はベストセラー作家でした。すごくためになる研修でして」

○鷲沢社長:「その割には、ぜんぜん傾聴力が身についていないじゃないか」

●柿木リーダー:「彼の本は7冊も出ていたので、そのうち2冊を近所の本屋で買いました」

○鷲沢社長:「そんなに気に入ったのなら7冊全部買えよ」

●柿木リーダー:「7冊すべてお貸ししましょうか。社長も読んでみたらいいですよ」

○鷲沢社長:「買ったのは2冊じゃないのか」

●柿木リーダー:「ネットの古本屋で買ったのが5冊あるのです」

○鷲沢社長:「どうでもいいところだけ答えるなよ」

●「天才的なセールスかもしれないがマネジャーには不向きだ」

●柿木リーダー:「前職では支店長をやり、若い部下を5人任されていました。マネジメントは任せてください」

○鷲沢社長:「話がまったく噛み合わない君がマネジャーをやれたのか」

●柿木リーダー:「成績は全国16支店のなかで私の支店がダントツの1位でした」

○鷲沢社長:「君が支店を統率して結果を出したわけではなく、ほとんどが君自身の成績だろう」

●柿木リーダー:「どうしてわかったのですか」

○鷲沢社長:「都合のいいことは耳に入るようだな」

●柿木リーダー:「ご明察です。支店の成績の7割は私があげました」

○鷲沢社長:「営業ならともかく支店長としてはまったく自慢にならん。部下5人をマネジメントした結果ではない」

●柿木リーダー:「部下5人がまるで使えない人間だったので」

○鷲沢社長:「勝手に決めつけるな。君は天才的なセールスかもしれないがマネジャーには不向きだな」

●柿木リーダー:「天才ですか。社長、ありがとうございます」

○鷲沢社長:「人をイライラさせる天才だよ」

●柿木リーダー:「私と話をして、イライラすると言われたことはないです」

○鷲沢社長:「都合の悪いことは何も耳に入らない君が言っても信用できん」

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